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 心房に開く血管は血液を心臓に導いている,これを静脈Venen, Blutadernという.心室から出ていく脈管は血液を心臓から送りだす.これを動脈Arterien, Schlagadernという.心臓の右半分は体静脈Körperblutadernを通じて全身からの血液を集め,そこから血液は肺動脈によって肺にいたる.

 心臓の左半分には血液が肺静脈を通って流れこみ,体動脈Körperschlagadernを通じて送りだされる.

 肺およびそれ以外の体じゆうで動脈と静脈の間には,どこにもはなはだ細かい血管からなるみごとな仕組みが介在しており,おびただしい網を作っている.これは毛よりもずっと細いものであるが毛細管Kapillaren, Haargefdäßeとよばれる.

 このようにつながった大小の血管からなる1つの閉じた系統があるわけで,そのなかを血液がめぐっている.つまり血液は体から右心房に,そこから右心室に,右心室から肺に,肺から左心房に,ついで左心室に,そして左心室から体にいたる.血液がこのように体じゆうを流れて廻ることを血液循環という.

 血液がつねに心臓の一方の半分からでて力つよく発達した毛細管の部分をへて他の半分にいたるという流れは,主要な2つの部分に分けてみることもできる.右心室から肺動脈をへて肺に,そこから肺静脈をへて左心房にいたる血液の通路,簡単にいうと右心室から左心房にいたる道を小循環kleiner Kreislaufまたは肺循環Lungenkreislaufという.左心室から体動脈をへて体に,そこから体静脈をへて右心房にもどる道を大循環großer Kreislauf,または体循環Körperkreislaufという.この2つの循環はもちろん全く分れているものではなく,左右の心房と心室の間にある横に渡された穴のある隔壁によってたがいにつづいている(図599).

 この全循環の各部分を血液の性質によって次のごとくわけることもできる.すなわち酸素に富む鮮紅色の動脈血が通っている血管と,炭酸ガスに富む青赤色の静脈血を有しているものとに分ける.かくして右心房に入る血管(上大静脈と下大静脈)は静脈血をはこび,これは右心室から出ていく肺動脈で肺に運ばれる.一方,左心房には肺静脈を通ってきた動脈血が入り,これが左心室から太い体動脈に押しだされる.

 リンパ管系も静脈系と同様に求心性方向に導くものである.そのなかに含まれて流れている液体は定まった場所で直接に静脈系に入る.リンパ管系の役割ははなはだ重要なものである.それは1. 毛細血管系からでてきた余分の液を集める.2. 毛細血管とともに組織との交通を仲介する.3. 組織からの分解産物を導きさる.4. 腸のリンパ管(乳ビ管Chylusgefäße)によって盛んな吸収作用を行なう.5. はなはだ数多くのリンパ節およびこれと同種の組織からリンパ細胞(白血球に属し遊走する)を新しく作る.6. これらの腺(リンパ節などのこと)によってリンパ,ひいては血液の一部に対して濾過,あるいは洗浄装置として役だつのである.これらについてはリンパ管系の項を参照されたい.

循環の段階

 個体の一生にはただ1つの循環だけがあるのではなく,時間的に連続した次の3つの循環がある.それは胚性embryonal,胎性fetalおよび生後postfetalのもので,あるいはこれらを1次,2次,3次,または卵黄嚢循環,胎盤循環,胎盤後循環とよぶことができる.

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最終更新日13/02/03

 

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