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後の2つはStöhr jr.が確認しえなかったものである.この3つの神経叢の線維はJoris(1906)によると運動性である.

 運動性線維のほかにJorisによると知覚性線維がある.これもやはり脈管周囲神経叢から出てくるが運動性神経叢とは関係がない.この線維は一般に短くてうねり,多くの側枝を出して知覚終板をもって外膜と筋層とに終る.この終板は周囲に対しはっきりした境をもっていて,所々に小さい瘤状のふくらみのある線維からなっている.Stöhr jr. によれば小動脈で,特にそれが毛細管に分れる前に知覚神経の終る装置がたくさんに存在する.

 動脈の太さの減少とともに,神経線維の量も減ずるのは当然である.筋層が1層の平滑筋からなる血管はただ2つの運動性神経叢をもち,その1つは外膜に,他の1つは筋線維間にある.またさらに後者からおこる神経原線維の網Neurofibrillengitterと神経終末細網nervöses Terminalretikulumがある.また知覚終末も減少する.

 Voss(Z. mikr. . anat. Forsch. 57. Bd.1951)は小動脈の内部に紡錘形をしたものがあって動脈の腔内で遊離し,ただ細い柄で動脈壁とつながっていると記載している.これは内皮で被われ,弾性膜,平滑筋線維および結合組織をもっているという.

b)静脈Venae, Blutadern

α)全体の配置

 静脈には大循環と小循環のものがある.そのうち肺静脈はそれぞれ2本ずつの対をなす短い幹で,肺の毛細管系で動脈性になった血液を心臓の左心房に導く.これに対して肺動脈は右心室をでてまもなく左右の主枝に分れる大きな動脈であって,静脈性の血液を肺に送っている.

 体静脈は体じゆうの毛細管系からおこる.その初まりは細いが次第に集まって大きな幹となり,成人では最後に2つの主な幹,すなわち上下の大静脈をもって右心房に開く.そのうち上大静脈V. cava cranialis, obere Hohladerは主として上半身の静脈性の血液を,下大静脈V. cava caudalis, untere Hohladerは下半身の静脈性の血液を集める.第3の小さい静脈幹,すなわち大心静脈V. cordis, magnaは心臓壁の血液を右心房に導いている.

 静脈の数は動脈の数よりはるかに多い.それは多くの比較的小さい動脈のそばにはそれぞれ2本の静脈,すなわち伴行静脈Venae comitantes, Begleitvenenとよばれるものが走っており,ただ比較的大きな動脈幹となると1本の大きな伴行静脈を伴っているからである.動脈に伴行する静脈のほかに,動脈と無関係に分布する多数の静脈が別にあって,その一部は深い所に,一部は体表面に近く皮下にある(皮静脈Venae cutaneae).なお静脈系では吻合が動脈よりはるかに多くみられる.この吻合によって広汎な多数の静脈網Retia venosa, Venennetzeと静脈叢Plexus venosi, Venenplexasが生ずる.静脈の数がより多いこと,また個々の静脈がより広くできているために,静脈系の全体は動脈系に比べていっそう大きい場所をしめるのである.この両系の容量の相違を正確に定めることはむつかしいが,静脈の容量は動脈のそれのおよそ2倍である.今まで述べたところにより静脈と動脈とは(肉眼的の観察では)血液の流れの方向がちがうこと,数と広さ,枝と主幹の全体的な配置が一部異なっていること,さらにその内容物によって区別できる.動脈は酸素に富む鮮紅色の血液を,静脈は炭酸ガスの多い暗紅色の」血液を通じている.しかしこれは大循環の動脈と静脈についてであって,小循環の血管ではこの関係が逆になっている,さらに生後の個体にあてはまるだけで,胎生期には脾動脈は炭酸ガスに富む血液を,臍静脈は酸素の多い血液を導いている.もう1つの相違が壁の構造にみられる.静脈壁はより薄く,特に弾性成分と筋成分が比較的少なくて,結合組織が目立つのである.そのうえ静脈は,心臓との境にしか弁装置を有しない動脈とは反対に,非常によく発達した弁装置をそなえている.

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最終更新日13/02/03

 

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