Band1.514   

最も細い動脈から分れたばかりの,あるいは最も細い静脈の初まりに集まってくるところの30~60µ位の太さをもつ比較的大きい毛細管は,まだ樹枝状の枝分れをなし,血流の方向も動脈または静賑のそれと一致しており,壁の構造も中間的である.このような毛細管を動脈性毛細管arterielle Kapillarenおよび静脈性毛細管ventise Kapillarenという.それより細い本当の意味の毛細管は短い部分だけである.これは網状をなしてあらゆる方向に走り,壁の性状も一様で,その直径は平均7~10µである.特に太い毛細管としては肝臓,骨髄,歯髄のものがあり(12~20µ).最も細いものは網膜や筋にみられる(5~6µ) (図109,117).しかしこれらには非常に細いもののほかに中等大の口径のものもみられる.肉眼で毛細管を見ることはできない.毛細管のなかに血液がいつばいに入っているときは,それが分布している器官に毛細管の量に応じて赤さの度合がちがうが均等に赤色をあたえる.毛細管がわずかしかないばあいにはやっとわかる程度の色しかついていない.また器官の色はそれを被っている被膜(血管をもたない)によって当然影響をうける.

 血液は毛細管の中では搏動せず一様に流れる.より太い毛細管中ではより細いものめ中より早く流れ,しかし最も細い動脈や静脈の中よりもはるかにゆっくり流れている.毛細管の内腔は壁が弾力性をもっているので,内圧に応じて広くなったり狭くなったりする,毛細管の細胞の原形質は少量しかないが,これがおそらくはわずかながら収縮しうるのであろう.またS. Mayer(Anat. Anz., 21. Bd.1902)によると毛細管には枝分れした平滑筋の被いがときれときれにあるという.それゆえ収縮性のあることは確実で,さらにStrickerによると毛細管はその内腔がなくなってしまうほどまで自動的に収縮できるという.

 毛細管の分布状態は体のあらゆる領域にわたって決して単一の型を示さない.その型はむしろ諸器官の微細構造にしたがって変化し,主としてその構造によって定められている.ほかのところ例えば骨では,血管の広がり方が器官の構造を決定する重要なものとなっている.だから総体的にみると,毛細管の分布する状態は器官の微細構造が非常にさまざまであるごとく変化に富んでおり,それぞれの器官について特有な分布状態であるといえる.それゆえ毛細管の分布だけをみて,1つの器官を判別することが可能である.個々のばあいについていえば次のごとき基本型が分けられる.

1. 係蹄Schlinge;単一のものと複合のものとがある.この型は広い範囲にわたってみられ,たとえば皮膚の乳頭,滑液膜絨毛などにある(図613).

2. 係蹄網Schlingennetz;係蹄が網と結びついたもの.前者と同じくはなはだ広くみられる.たとえば腸絨毛にある.

3. 血管糸球 Glomerulum, Gefäßknduel, Schlingenknäuel;種々な形の腎臓にみられる.

4. Netz, 網材Netzgertist ;網とは空間内の2軸を含む平面上で毛細管の多くの枝分れがたがいに結び合っている型である.これが3軸の方向すなわち立体的の広がりをなすと網材Netzgertistの型となるが,この型がいちばん多い.この網と網材のすきまは丸みのある多角形,細長い多角形,不規則な多角形などいろいろであり,またすぎまが広いことも狭いこともある(図479).

5. 小窩Lakune;体内の若干の器官では動脈と静脈のあいだに血流の道が湖のよ5に広がった所があって,そこは特別な構造をしている.ここははなはだしく広がった毛細管とみなされる.このようなものは陰茎海綿体,尿道海綿体,脾臓の静脈性毛細管,胎盤などにある.この空所が大きいばあいには細い動脈が直接その中に注ぎこむこともあり得る.

毛細管の構造

動脈が毛細管に移行するところは壁の構造が次第に簡単になってくる.中膜は薄くなり,筋細胞も離ればなれになり,さらにすすむと筋細胞が散見されるのみとなり,ついには全く消失してしまう(ただし上述のS. Mayerの説を参照されたい).

 外膜は初めは細胞をもった一層の薄い結合組織からなっているが,やはりまったく消失する.内膜に属する比較的外側の層も薄くなり遂には消失してしまう.

[図613]毛細管係蹄の単一型(a, b)と複合型(c)

S.514   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る