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しかしBenninghoff(1926)はこの細胞を線維細胞の1種とみなした.リンパ性組織内の毛細管は細網の線維の細い突起により支えられている.その突起が管の外面に固着している.また細い弾性線維が毛細管をとりまいていることがあって,その例は外皮にみられる.

 毛細血管はリンパの道Lcrmphbahnenと密接なつながりをもっていて,多くの場所で直接に血管周囲リンパ管でとりかこまれている.かくしてリンパ管は器官と毛細血管の間に入りこむのである.

 毛細血管は神経原線維の細かい網を伴っている(図616).

 いろいろな器官の毛細管は基本的な構造では共通しているがこまかい点ではそれぞれ異なるのである(Pfuhl, Z. Zellforsch., 20. Bd.1938参照).

 比較的近年になって特別な顕微鏡(皮膚顕微鏡Hautmikroskop, 眼顕微鏡Augenmikroskop)の助けをかりて生きている人の皮膚や目の毛細管を観察できるようになった(Encyklopädie d. mikr. Technik, 3. Aufl.,1926/27参照).

 大循環の毛細管領域では血液の流れる速さが血管系の全体を通じて最も遅い.いちばん細い毛細管ではただ1列の赤血球しかそこを通過できないし,また事情に応じて赤血球は形を変化してそこを通る.すなわち長く伸びたり,管の枝分れの所では赤血球が折れまがったりして,ついでふたたび自分の弾性によって正常の形に戻るのである.人の網膜の毛細管における血流の速さは眼の外から計測したところ,平均して1秒間に約0.6~0.9 mmである.

 失神あるいは死亡などによる動脈血圧の下降にさいして,人の皮膚の毛細管は真皮の緊張に影響されて空つぼになる.そのとき毛細管は血液を静脈に送りだしてしまう, 確かに正常状態でも白血球の一部は血管壁を破つたりしないで血管外に出てゆく(游出,Diapedesis) (図612).

 異常な状態ではこの游出が高度におこり,また赤血球をも含むようになることがある.赤血球の游出はとくに静脈の流れが停滞したときに現われる.白血球は炎症Entzündungにさいして単独に,あるいは少量の赤血球とともに血管壁から出てゆき血管の外で膿球となる.白血球はアメーバ様運動によって内皮細胞のあいだにある小口を通って出てゆくのである.

IV. 血液Sanguis, Blut

 血液を全体として考えてみるとすでにおりおり述べたように1つの器官であるということができる.しかも液状をしていて,個体の生きている間はひと廻りしてもとの場所に帰つてくる管の形をした道のなかを移動している器官である.器官としての血液の形は脈管系の形に一致する.

 人の血液の量は体重の7~8%をしめている(Bischoff他の学者によると12.5%までをしめるという).したがって平均体重の人の血液の重さば6kgとなる.たとえば肝臓が平均1500 grの重さなのであるから血液はほかの何れの器官より重いのである.

B. 脈管学各論

I.心臓Cor, Herz

 心臓は空洞をもつ筋性の器官で,やや平たい円錐の形をなし,心外膜Epicardium,心筋層Myocardium,心内膜Endocardiumの3層からなっている.このうち中層の心筋層Myocardium, Herzmuskel, Muskelschicht des Herzensが最も強大である.心筋の外面を被っている漿膜は心外膜Epicardiumといい,心臓と心臓から出る太い血管の基部を保護している心膜Pericardiumという漿膜の嚢の臓側葉である.

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最終更新日13/02/03

 

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