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心筋層の内方にある心臓の内膜,つまり心内膜Endocardiumは1層の内皮細胞とその下にある結合組織の層からできている.心内膜は心臓の空洞の内面全体を被い,空洞の中にある血液をとりかこんでいる.

 心臓は後上方に向かってかなり広くなって終る.そこを心底Basis cordis(図622)といい,ここからいくつかの太い血管が出ている.心底にはこれらの太い血管があると同時に心膜の臓側葉が折れ返って壁側葉になるところであり,したがってまた心臓を周りの部分に固定するところでもある.心臓の円みをおびた先端,すなわち心尖Apex cordisはそこから心底までの間の心臓体と同じく全面が遊離していて,漿膜の嚢の空所の中で容易に動きうる(図618, 619).

 前面は胸肋面Facies sternocostalisといい膨隆しているが,後面の横隔面Facies diaphragmaticaは横隔膜の上に接するために平らになっている.左右の両縁のうち右縁はいっそう鋭くて,またいっそう長くなっているが,左縁は円みをおびていて比較的短い.

 深い横走する冠状溝Sulcus coronarius, Querfurcheが心臓を外面において心房部と心室部に区分しているが,この溝は前面では肺動脈と大動脈の起始部で中断される.心房部と心室部には前と後に縦走する溝,前室間溝後室間溝Sulcus interventricularis ventralis, dorsalisが1本ずつあって,それぞれ心室と心房を左右に分ける隔壁め所在を示している.これら前後の縦溝は心尖を越えるのでなく,すぐその右側でふつうは心尖切痕lncisura apicis cordis(図618)とよばれる浅いくぼみを作っている.

[図617] 心臓の構造模型図 (Henleによる,やや改変)

心臓各部の概観

 心臓は2つの心房Atria cordis, Vorhöfeと2つの心室Ventriculi cordis, Kammernからなる.前者は心臓の心房部,後者は心室部である.右心房と右心室は右心rechtes Herz, Lungenherz,あるいは小循環心臓で,左心房と左心室は大循環の心臓すなわち左心linkes Herz. Körperherz. Aortenherzである.右と左の心臓は1つの隔壁によってたがいに分けられている.その隔壁の左右の心房間にある部は心房中隔Septum atriorum, 左右の心室間にある部は心室中隔Septum ventriculorumとよばれる(図623).

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最終更新日13/02/03

 

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