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 左心室の壁は右心室の壁の3倍の厚さがあり,心底に向かった1/3のところが最も厚く,それより心房に向かっても薄くなるが,心尖に向うといっそう著しく薄くなる.心尖が多くの場合,左心室の壁の最も弱いところである.

 肉柱Trabeculae carneae(図625)は全般的に右心室のものより幅が狭くて数が多く,かついっそう密に入り乱れている.心尖の後壁において特にそうである.乳頭筋Mm. papillaresはたいてい右心室のものよりはるかに強大で,右乳頭筋M. papillaris dexterと左乳頭筋M. papillaris sinisterという2群に分けられる.房室口と動脈口とはたがいに密接していて,前尖Cuspis ventralis, Aortensegelだけで境されている.そのさい戻室口は後方に,動脈口は前方にある(図621).房室口には2枚の主尖からなる弁があり,二尖弁(僧帽弁)Valvula bicuspidalis (mitralis)というが,全体としていっそう丈夫にできているほかは三尖弁とよく似ている.

[図624] 左心室の半月弁と尖弁(5/6)

この前後2枚の尖が心室内に同じ長さで突出しているのではない(図625).大きな前尖Cuspis ventralis, Aortensegelが閉鎖の大部分をつかさどり,前方にあってちょうど房室口と動脈口のあいだにある.短い方の後尖Cuspis dorsalis, Wandsegelは後方にあって心臓の後壁から出ている.この2つの尖の間に小さな補助尖がはいりこんでいる(図621, 625).

 乳頭筋の腱索のおのおのの組はその半分が1枚の尖に他の半分がもう1枚の尖に着いているので,乳頭筋が収縮すると尖は緊張するだけでなく匠いに近よるのである.腱索は右心室よりも数が多くまた強くできている.

 動脈口は円形で,そのそばにある房室口よりもいくぶん狭い.ここには3枚の帆があり1つは前方に,他のものは右と左にあり,それぞれ前半月弁,右半月弁,左半月弁Velum semilunare ventrale, dextrum, sinistrumという.右と左の半月弁は二尖弁の前尖と会合する(図621, 624).この3枚の帆は右側のものに比べて厚くて丈夫であり,半月弁半月や半月弁結節もそれに応じていっそうはっきりしている.大動脈洞もまた強くふくれている.

 前と左の大動脈洞から大動脈の最初の枝である心臓の栄養血管,すなわち冠状動脈Arteriae coronariae cordisが出ている.

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最終更新日13/02/03

 

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