Band1.533   

心底にある割合い大きな神経節のほかになお比較的小さな神経節が神経の走っている途中にあり,これは特に心臓の内部にみられる.

 心筋の神経は脈管のすぐそばにあるがまた独立して走る神経束もある.神経はおそらく粗大な網目の神経叢をなしていると思われる.神経叢から出る神経線維はさらに筋線維のあいだに終末神経叢を作っている.これは非常に細い無髄線維からなり筋線維に密接する.神経終末装置は人の心筋線維では今までまだ確認されていなない(第II巻,図569).

 哺乳類の心内膜には次にあげるような若干の神経叢が区別されている.1. 広い網目をもつ心内膜下の神経叢;2.1つないし2つの心内膜固有の神経叢;3. 内皮下の神経叢(Al. Smirnow,1895).有髄線維は無髄線維にくらべて数が少ない.有髄線維とその側枝は知覚性の枝分れの型を示し,心内膜のいろいろな深さのところに終わっている.

 Smirnow, A. E., Anat. Anz.,18. Bd.,1900. Ph. Stöhr jr., Handb. mikr. Anat., 4. Bd.

心臓の大きさと重量と表面積

 心臓の大きさと重量,壁の厚さ,内腔の容量,大きい開口部の広さなどについては数多くの計測がなされている.

Laenxec以来,心臓の大きさはだいたいその個体の握りこぶし位の大きさであると考えられている.中くらいの程度に充満している状態の成人の心臓は平均の長さ12~15 cm, 幅9~11 cm, 厚さ5~8cmである.

 すべての部分について男の心臓は女のより強く発達している.概して年令とともに壁の強さが増すのである.

心臓の体積は成人で258~360ccm(Hoffmann)である(Krauseによると160~260 ccm).個々の部分の収容能力(容量)は膨張の程度によってちがうのでただ近似の値しか決めることができない.Cruveilhierによると右心房と左心房の広さの比は5:4である.

HiffelsheimとRobinによると心房の容量は心室の容量より大体1/3ないし1/5ほど小さい.容量は次のとおりである.

成人

新成人

右心房

110~185ccm

7~10ccm

左心房

100~130ccm

4~5ccm

右心室

160~230ccm

8~10ccm

左心室

143~212ccm

6~9ccm

 心臓の右半分と左半分の間にみられるこのかなり著しい相違はたぶん1部には右心の方がよりたやすく膨張できるということにあるのであろう.心室の口の周囲は次のような長さである.

Bizot

Wulff

Peacock

Bouillaud

最大

平均

最小

右房室口

123.6

107.5

129.7

124.5

115.3

101.6

108.4

104.5

106.1mm

左房室口

110.4

92.7

117.2

113.8

97.4

91.0

104.5

99.4

88.0mm

肺動脈口

71.8

66.9

84.7

82.5

76.7

70.0

67.7mm

大動脈口

70.4

64.1

76.2

72.0

72.2

67.7

63.2mm

心臓の平均重量は次のとおりである.

Dieberg

346gr

340gr

100:98.84

Peacock

285gr

265gr

100:92.98

Blosfeld

346gr

316gr

100:91.32

Clendenning

267gr

240gr

100:89.88

Sappey

366gr

230gr

100:86.46

Hoffmann

325gr

270gr

100:83.07

Reid

320gr

260gr

100:81.84

 成人の心臓の平均重量としてはWulffは291gr,Lobsteinは260~290gr,Bouillaudは245gr,Cruveilhierは177~234grをあげている.

 新生児の心臓の重量はSmith 19.5~23.6gr,Vierordt 23~24 grである.それが生後6ヵ月で約50%増加する.(日本人の成人心臓重量の平均は男272.5gr,女233.0grである.また新生児の心臓の平均重量は13.1gr,6ヵ月の乳児では31.5grである(岡暁, 京都医誌38巻,昭和16年下).)

(Rossi, Herzkrankheiten. G. Thieme, Stuttgart 1954)

 S.533   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る