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その両方の場合に弓の各半がふたたび後方でいっしょになって輪を作り,その輪を気管と食道が通過している.1つの型では2つの弓が正常の方向を保っており,肺動脈は正常の位置にあって,動脈管索によって大動脈弓の左の部分と結びついている.各々の弓から頚動脈と鎖骨下動脈がそれぞれ1本ずつ出る.他の型では輪が対称的にできていて,その各半は気管と食道を同じぐあいにとりまいて後下方に向かっている.肺動脈は前上方からまがってこの輪を通りぬけ,輪の下方で枝を送り出している.

 大動脈弓の右曲り.右に曲がっている大動脈弓には種種の型がある.心臓やその他の内臓の位置が反対になっていることもあり,あるいは器官の位置には変化がなくて,左の腕頭動脈,右の頚動脈,右の鎖骨下動脈が出ていたりする.また右に曲がっている大動脈弓から左頚動脈,右頚動脈ジ右鎖骨下動脈,食道の後をとおる左鎖骨下動脈という順序で血管が出ていることがある.

 右曲りの大動脈弓の変つた1例をHoepkeが記載している(Anat. Anz, 54. Bd.,1921).

2)大動脈弓の枝の変化

a)枝の位置

 大動脈弓の凸側から出るすべての枝が右の方に移って,大動脈弓の初部や上行大動脈から出ていることがある.太い枝の起始する間隔が等しいこともあるし,またその間隔が異常に広いこともある.また左頚動脈が左鎖骨下動脈と腕頭動脈のいずれかにはなはだ近寄っていることもある.

b)枝の数と配置

 最もしばしばみられる変異は2本の腕頭動脈が形づくられている場合である.

 それよりまれなのは左右の頚動脈が左右いずれかの鎖骨下動脈といっしょになって,1本の幹をなし,残りの鎖骨下動脈と合わせて2本しか枝がみられない場合である.

 大動脈弓から3本の枝が出ている場合に左右の鎖骨下動脈が別々に出ており,両側の頚動脈がいっしょになって中央からでる1本の幹となっていることがある.

 特徴ある変異として大動脈弓からわずか1本の幹が出ていることがある.この幹はまっすぐ上方にすすみ,十字の形で左右の鎖骨下動脈を両側に出し,共通の1本の幹がさらに上行して,これが左右り頚動脈に秀れる.

 大動脈から発する枝の数が増加していることも珍しくない.腕頭動脈がなくなって,そのかわりに大動脈弓から直接に4本の太い枝が出ている場合には枝が4本というわけである.このような時には右鎖骨下動脈が大動脈弓から出る最後の枝になっていて食道の後を通って反対側にゆく.4本の枝が出る場合は上述のもの以外でも各枝の位置がはなはだしく変動していることがあって,胸腔の上口に向かって走るうちに複雑に交叉するのである.

3)他の幹から出るべき枝が大動脈弓から出ていること

 この型の変異としては鎖骨下動脈から出る椎骨動脈のうちの1本または2本が大動脈弓にずれてきていることがはなはだ多い.そのさい大動脈弓の主枝の起り方が正常であることもあるし,主枝の起る数がふえたり減つたりしていることもある.たいていは左の椎骨動脈が左頚動脈と左鎖骨下動脈との間にずれてきている.また右の椎骨動脈が大動脈弓から出ていることもある.3本の主枝の起りが正常である場合には1本の椎骨動脈が加わることによって大動脈弓の枝の数が4本に増すことになり,2本の椎骨動脈が加わるときは5本ということになる,腕頭動脈が2つに分れ,その上さらに2本の椎骨動脈が大動脈弓から出ているときは大動脈弓から6本の枝が出ていることになる.

 椎骨動脈が出る場合よりもっと多くの例で最下甲状腺動脈A. thyreoidea imaが大動脈弓から出ている.非常にまれであるが左の肋頚動脈が動脈弓から出ていることがある(Oertel, O., Z. Anat. Entw.,83. Bd.,1927).

総頚動脈Arteria carotis communis

 左右の総頚動脈のうち,右は右の胸鎖関節の高さで腕頭動脈から,左は腕頭動脈と密接して大動脈弓の最も高いところから出る.そのため左総頚動脈は右のものより4-5cm長い.

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最終更新日13/02/03

 

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