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7. 深頚動脈Arteria cerv'icalis profunda (図645)

 この動脈は肋頚動脈または鎖骨下動脈を出て,まもなく第7頚椎の肋横突起と第1肋骨の間に向かってすすみ,そこを貫いて,項部で半棘筋の上を第2頚椎まで達する.これは脊柱管のなかに脊髄枝Rami spinalesを送り,深頚筋と深背筋に後枝Rami dorsalesをあたえるが,その枝の1つはときとしてはるか下方まで伸びている.

 変異:深頚動脈はときに椎骨動脈あるいは頚横動脈から出ており,まれには肩甲上動脈からも出ることがある.またときとして欠けていることもあり,そのさいは付近の動脈の枝がこれを代行している.

8. 最上肋間動脈Arteria intercostalis suprema (図645)

 この動脈は肋頚動脈または鎖骨下動脈から出て,第1肋骨の頚を越えて下方に走り,第1肋間隙または第1と第2の肋間隙に終るが,その肋間隙を前方にすすんでいる.また後枝Rr. dorsalesを出す.第1と第2肋骨の間だけか,またはその上になお第2と第3肋骨の間において1本の枝が後方にすすみ,この枝はさらに筋枝Ramus muscularisと脊髄枝Ramus spinalisに分れるのである.

 変異:最上肋間動脈はまれに椎骨動脈あるいは甲状頚動脈から出る.ごくまれにこの動脈が欠如している.

9. 内胸動脈Arteria thoracica interna (図647, 648)

 この動脈は鎖骨下動脈の弓状部の凹側縁から出るが,これが長いことと,次々にたくさんの枝を出すことが特徴をなしている.鎖骨下動脈を出てから前下方にすすみ,鎖骨と第1肋骨の後を通る.そこから胸骨縁より外側に約1 cm離れて肋軟骨と壁側胸膜の肋骨部Pleura costalisおよび胸横筋の間をほとんどまっすぐに下方にすすむ.

 第6肋間隙で2本の終枝に分れるが,そのうちの1本は筋横隔動脈A. musculophrenicaといい胸郭の下縁で下外側に向きをかえる.もう1本の上腹壁動脈A. epigastrica cranialisは幹と同じ方向をとって前腹壁をさらに下方にすすむ.

 内胸動脈の枝は主に胸壁と腹壁に広がっている.

a)心膜横隔動脈A. pericardiacophrenica.細くて長い枝であり,胸の上部で始まって横隔神経と伴ない,これといっしょに横隔膜に達して,ここで他から来る横隔膜の動脈と吻合している.その走行中に小さい枝を周囲に出す.

b)前縦隔動脈Aa. mediastinales ventrales

 たいていは細い数本の小枝であって,前縦隔にある諸構造に分布している.すなわち胸腺とその残りのものにいたる胸腺動脈Aa. thymicae, リンパ節,脂肪組織,胸膜の縦隔部,心膜,胸骨の後面,胸横筋にいたる胸骨枝Rr. sternales,気管支にいたる気管支枝Rr. bronchalesなどである.

c)肋間枝Rr. intercostales.これは前方にある肋間動脈というべきもので,おのおのの肋間隙に2本ずつあり,そのを本が内胸動脈から別々に出るか,または共通の幹をもって出ている.内胸動脈から分れて外方にすすみ,初めは胸膜に密接し,ついで肋骨縁の近くで肋間筋群のあいだを通って,大動脈からやって来る肋間動脈と合する.この枝は胸部の筋および肋間筋を養い,また小枝を乳腺と皮膚に送っている.

d)穿通動脈Aa. perforantes.この動脈は第1から第5までの肋間隙あるいは第6肋間隙までを貫いて外方に出て,一部は胸骨の前面で枝分れをなし,一部は胸部の筋にゆく筋枝Rr. muscularesとなり,また皮膚に分布する皮枝Rr. cutaneiとなっている.乳腺の近くではいりこむ枝は女では乳腺枝Rr. mammariiという強い枝をなして乳腺にいたる.

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最終更新日13/02/03

 

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