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e)筋横隔動脈A. musculophrenica.外側へすすむ終枝であって,肋骨弓の後で下外側に向い,第8と第9肋骨のあいだで横隔膜の起始を貫いて最下の肋間隙に終わっている.これは横隔膜と下部の肋間隙に枝をあたえるが,この枝は内胸動脈の肋間枝ど同じ関係を示すのである.

f)上腹壁動脈A. epigastrica cranialis.内側にある終枝であって,横隔膜の胸骨部のあいだのすき間を貫いている.この動脈は腹直筋の後面に沿って腹直筋鞘の中を下行して,驕のあたりに達して下腹壁動脈とつながる.1本の小さい枝が剣状突起にいたり,またほかの枝が前腹壁の筋と横隔膜に分布する.ときにはなお1本の枝があって肝鎌状間膜を通って肝臓に達している.

 変異:内胸動脈はときに甲状頚動脈から出たり,眉甲上動脈といっしょになって大動脈から発している.まれには腕頭動脈,腋窩動脈,大動脈からも出る.--内胸動脈が胸腔に入るところでこれから1本の太い枝,すなわち外側肋骨枝Ramus costalis lateralisが起ることがまれでない.これは胸膜と胸壁の間を外側下方に向かってすすんで,しばしば第6肋骨にまで達し,前と後の両方から来る肋間動脈とつながっている.

腋窩動脈Arteria axillaris (図647, 648, 649)

 腋窩動脈は第1肋骨の外側縁で始まり大胸筋の下縁まで(または他の学者によると広背筋の腱まで,あるいは上腕骨の外科頚まで)の部分である.

 局所解剖:この動脈は腋窩を貫いており,上腕がとる位置によりその方向が変る.前方からは大胸筋と一部は小胸筋からも被われ,またそれぞれの筋膜もこの動脈を被っている.腋窩ではこの動脈は腋窩筋膜および表層のリンパ節のすぐ下にある.腋窩静脈はこの動脈より内側にあり,またいくぶん表層にある.

 腋窩動脈を3つの部分に分けている.第1の部分は小胸筋より内側で胸郭の壁に密接しているところ,第2の部分は小胸筋で被われて胸壁から上腕に向うところである.第3の部分は小胸筋より遠位で上腕骨に接している部分である.

 1の部分ではこの動脈は外側鋸筋の上に乗つていて,丈夫な烏口鎖骨胸筋膜で被われている.腕神経叢Plexus brachialisの諸幹はこの動脈の上後方にあり,鎖骨下静脈は前内側にある.2の部分は小胸筋の後方にあって,ここでは動脈が腕神経i叢の幹でとりまかれている.そのさい多くは正中神経の両根が合してフオーク形の両叉をするところにとりまかれている.第3の部分においてこの動脈は肩甲下筋および広背筋と大円筋の付着腱の上にあり(図648, 649).一方その外側壁は烏口腕筋に接している.腕神経叢の主な枝はこの動脈のすぐ後方および両側にある.上腕骨の外科頚のところにおしつけると腋窩動脈は容易に圧迫される.

 神経:下頚神経節,尺骨神経および正中神経から来る.

 変異:腋窩動脈が正中神経の両叉部にとりまかれていないことがある.そのときには普通だと両叉をなす2本の根が腕神経叢のほかの束と合して1つの索をなしているのである.このようなことはヨーロッパ人では0.8%に,日本人では5%にみられる(Adachi).

 腋窩動脈の枝としては,細い不定の筋枝と小さい肩甲下枝Rr. subscapularesのほかに,胸壁表層の諸筋にいたるたいてい3本の動脈と肩甲部にいたる肩甲下動脈,および上腕にいたる2本の回旋動脈である.

1. 最上胸動脈Arteria thoracica suprema

 貧弱で不定な枝であり小胸筋の上方で起こって,第1と第2の肋間隙の上を下内側にすすみ,外側鋸筋の上部の起始尖と肋間筋に枝をあたえ,最後に大胸筋と小胸筋のあいだに広がっている.

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最終更新日13/02/03

 

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