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総骨間動脈は腋窩動脈または上腕動脈から出ているときには上腕動脈の後方に伴って肘窩に達する,そして前腕の諸筋の間をへて深層に入り,その正常の位置をとる.--橈骨動脈が高位で始まるときには他の幹をなす部分が正中神経に伴って尺側上腕筋間中隔に沿って尺側上顆に向かって下行し,ついで円回内筋の起始のところで外側にまがってこの筋の下にはいり,肘窩の中央でその正常の位置をとるようになる. 上腕動脈が最後に分れて生ずる2本の枝がときとして肘窩の近くで横走する1によってたがいに結合していることがある.この枝はだいてい強い方の動脈からいっそう弱い方の動脈に向かっていて,その太さや形および位置はまちまちである,それよりまれに初めに分れた2枝がまた完全に合して1本となることもある.迷行動脈Vasa aberrantiaと名づけられているものは,長くて多ぐは細い動脈であって,腋窩動脈か上腕動脈から出て前腕にある動脈の1つか,あるいはその枝の1つとつながるのである.Quainの観察によると迷行動脈は9例ちゅう8例まで橈骨動脈とつながりまれに尺骨動脈とつながるのである.この変異は上腕動脈に高位の分岐が起こって,かくして始まつた枝がふたたび横走する吻合枝でたがいにつながっている場合に準ずるものと云える.--たいていの例で上肢における高位の分枝は左右同じ関係にはなっていない.すなわちQuainによると上腕動脈の高位分枝を示した61個体のうち43例は左右のうち1側にだけそのことが見られ,13例では両側に見られたが,その程度が左右で違っており,わずか5例だけで左右が同じぐあいになっていた.

4. 橈骨動脈Arteria radialis (図652600)

 橈骨動脈は上腕動脈と同じ方向をとって前腕をすすみ橈骨の遠位端までこの橈骨の走行に従って走っている.前腕の近位部では円回内筋と腕橈骨筋の間にあるが,それよりずっと遠位になると非常に浅層にあり,皮膚と筋膜のみに被われて腕橈骨筋の腱と橈側手根屈筋の間を通る.ついで手背に達するが,そのさい長母指外転筋と短母指伸筋の腱の下をへて第1中手骨間隙にいたり,そとに達して終枝に分れる.

 局所解剖:橈骨動脈の通る道は肘窩の中央から橈骨の茎状突起と橈側手根屈筋の間の中点ば向かって引いた1線に一致する.手関節の近くではこの動脈は広くなっている橈骨の遠位端の上に密接していて,そこでは皮膚と筋膜だけに被われているので,生体で外からこの動脈を容易に触れることができる.そこから橈骨動脈はその方向を変えて長母指外転筋と短母指伸筋の腱の下で手根部の榜側を越えて手背に達する.手背では大多角骨の上を通って第1中手骨間隙の初まりの部にいたり,長母指伸筋と交叉し,第1背側骨間筋の両頭のあいだで手掌に向かってまがう.そして直ち犀2本の終枝すなわち母指主動脈と深掌枝に分れるが,この深掌枝が,深掌動脈弓に移行するのである.  橈骨動脈はふつう2本の静脈を伴っている.前腕の中央部では橈骨神経の浅枝がこの動脈の外側にあるが,前腕の遠位端に近づくと両者は次第に離れそいく.

 神経:橈骨神経の浅枝からの枝.

 橈骨動脈の枝には次のものがある.

1. 橈側反回動脈A. recurrens radialis.これは腕橈骨筋と上肺筋のあいだを近位にすすみ,腕橈骨筋と橈側深層の諸筋および肘動脈網に枝分れする(図653, 654).

2. 筋枝Rr. muscularesは数多くの細い枝であって,橈骨動賑が前腕をずっと走っていく間にこれからつつぎつぎと出ている.

3. 掌側手根枝R. carpicus volarisは方形回内筋の遠位縁で発して,掌側手根動脈網にいたる.

4. 浅掌枝R. volaris superficialis.たいていは細い1本の血管で,母指球の諸筋の上かまたはその間を通って浅掌動脈弓に達するか,あるいはすでにそれより前に終わっている(図656, 657).

5. 背側手根枝R. carpicus dorsalis.これは手根の背側において背側手根動脈網Rete carpi dorsaleにはいるものである(図659, 660).

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最終更新日13/02/03

 

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