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しかし左側の肋間動脈は下方のものほど次第にその長さを増していく(図661).--大動脈から出る最初の肋間動脈erste A. intercostalis aorticaの起始は1個の椎骨の高さだけ,それに相当する肋間隙よりも下方にある.それゆえその肋間隙に達するために,上方に向かって開いだ鋭角を作って右側は椎体の前面を越え,左側は肋骨頚を越えて進まねばならない,それに反して下部の肋間動脈は殆んど直角に大動脈から出ている.ときどき2本の肋間動脈が短い共通の幹をもって出ている.このような場合に幹から分れた2本の枝の経過に特別な点があるのは当然である,一椎体の前にある肋間動脈の部分は椎骨と脊柱前面の靱帯に枝を送っている.大動脈からおこる右の第3肋間動脈はすでに592頁で述べたごとく,しばしば右気管支動脈A. bronchalis dextraという1本の臓側枝を出している.

 局所解剖:左右の肋間動脈は交感神経幹の後を走り,これと交叉する.右側の肋間動脈は同時に食道,胸管,および右縦胸静脈の後にある.

 背枝R. dorsalis.背枝は上下の肋骨頚のあいだで,内側は脊柱により外側は内肋横靱帯で囲まれた孔を通って後方にすすみ,まず脊髄枝Ramus spinalisを出し,ついで多数の筋枝を送って,その内側枝と外側枝で背筋群を養い,最後に1本の内側皮枝R. cutaneus medialisと外側皮枝R. cutaneus lateralisをもって皮膚を養っている.

[図661] 胸郭を横断して胸大動脈から出る諸枝を示す模型図 上方の断面を下からみる.(1/4) (Henleによる)

 A 胸大動脈;a, a 肋間動脈;b 筋枝;c 脊髄枝;d 内胸動脈;e 内胸動脈の肋間枝;f 胸骨枝;g 穿通動脈. 内胸動脈の肋間枝,肋間動脈の前枝,内胸動脈の胸骨枝がたがいに結合することによって各肋骨の高さで動脈輪arterietle Gefäßkranzeができている.これは特別の条件によっていっそう完全な発達を示すことがある;h, h, i, i後方および前方の臓側枝.

 脊髄枝Ramus spinalisはRüdingerの研究によると3本の定型的な枝をもって椎間孔を通り脊柱管に入る.これが前小枝,後小枝,中小枝である.前小枝Ramulus ventralisはすぐに比較的太い上行枝とそれより細い下行枝とに分れるが,これらは脊柱管の前壁で上下の両方からくる付近の同名動脈の枝と結合する.こうして左右各側にきれいな縦の血管弓Gefäßbogenが作られ,これが椎弓の根をとりまきその凸側をたがいに向け合っている.椎体の後面を通りすぎる内側の枝が両側の血管弓をたがいに結んでいる.後小枝Ramuli dorsalesは同側および他側のその付近にある小枝とつながって細かい網をつくり,この網は椎弓と弓間靱帯の内面の上に広がっている.しかし後小枝の網はたいていは前小枝のものより不規則である.第3の枝は中小枝Ramulus mediusであって,脊髄神経に沿って上行して脊髄とその被膜に達し,前および後脊髄動脈と吻合する.それによってこの2つの動脈は長く延びた縦の血管となっている.

 本来の肋間動脈A. intercostalisは一般にそれに相当する肋骨よりいっそうまっすぐに横走するもので,初めは肋間隙の後部を斜めにすすんで,肋骨角の近くで肋骨の下縁に達する.

 この動脈は外肋間筋の内面に接しており,後部では内胸筋膜のみによって胸膜の肋椎部から境されており,それより前方では内外肋間筋のあいだを走っている.そのさい肋骨下枝Ramus infracostalisとして下縁に沿い,肋骨溝の中にはいっている.これと並んで上方には静脈,下方には肋間神経がある.

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最終更新日13/02/03

 

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