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2. 胃十二指腸動脈A. gastroduodenalis

 幽門の後方をへて胃の下縁に向かって走り,ここで2本の枝に分れる.

α)上膵十二指腸動脈A. pancreaticoduodenalis cranialis.この動脈は十二指腸の内側縁に沿い,十二指腸と膵臓の頭のあいだを通り,小枝によってこの2つの器官を養う.ふつう上腸間膜動脈から出る下膵十二指腸動脈とつながっている.

β)右胃大網動脈A. gastrQepiploica dextra.この動脈は左胃大網動脈より太い.大網の前葉をなす2枚の漿膜の間をうねりながら胃の大弯に沿って右から左に走り,枝を上方は胃に向かって,下方は大網に向かってあたえ,最後に脾動脈から出てくる左胃十二指腸動脈と合する.

 変異:総肝動脈はときおり上腸間膜動脈または大動脈から出ている.そのほかまた副肝動脈accessorische Leberarterien(ヨーロッパ人で19.2%に,日本人で29.8%にみられる,Adachi)が付近の動脈,とくに左胃動脈か上腸間膜動脈から出ている.総肝動脈の枝の一部がときどして近くの他の動脈から出ている.また総肝動脈が横隔膜への枝を出していることもある.

[図664] 腹腔動脈の分枝

c)脾動脈Arteria lienalis (図663, 664)

 これは腹腔動脈の3本の枝のうち最も太いもので膵臓の大部分と胃の左の部分,および脾臓に血液を送っている.うねりながら,そしてしばしば強く巻きながら,だいたい横走して,その下方にある脾静脈を伴って膵臓の上縁を左にすすみ,脾臓の近くで多数の枝に分れる.比較的大きい5~6本の枝が脾臓のなかに入り,そのほかの枝は胃底に向かっている.この動脈の枝には次のものがある.

α)膵枝Rr. pancreatici.これは多数出ていて,そのなかのかなり太い1本の枝が膵管に伴って左から右にすすんでいる.

β)短胃動脈Aa. gastricae breves.この動脈は数と強さがまちまちであって,一部は脾動脈の本幹から,一部はその終枝から始まり,概して左から右にすすみ,特に胃底に広がっている.

γ)左胃大網動脈A. gastroepiploica sinistraは大弯に沿って左から右にすすみ,胃の前後両面と大網に枝をあたえ右胃大網動脈と合流する.

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最終更新日13/02/03

 

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