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e)中結腸動脈A. colica mediaは結腸間膜の両葉のあいだを横行結腸に向かってすすみ,前に述べたと同じ関係で近くの動脈とともに弓状のつながりを作り,それぞれ1本の右枝と左枝を送りだす(図665, 666).

 右枝は右結腸動脈の上行部と合する.

 左枝はいっそう太い枝であって,下腸間膜動脈から出る左結腸動脈の上行枝に達する.この動脈弓もまた第1列のアーチ型が広く引きのばされたものということができるが,これから出る小さい新たな動脈弓,あるいは直接に出る枝が腸管壁にいたる.

 変異:上腸間膜動脈はときとして腹腔動脈といっしょになって大動脈から出ている.ほかの例では上腸間膜動脈が2本の幹をもって大動脈から出ている.しばしば胃十二指腸動脈,肝動脈というような普通では腹腔動脈に属している枝がしばしば上腸間膜動脈から出たり,またこの動脈が過剰枝を肝臓,膵臓,十二指腸に送っていることがある.--非常にまれではあるが脾動脈との吻合がみられる(Lenner, Läkaresällskapets Handlingar, 51. Bd.,1925).

3. 下腸間膜動脈Arteria mesenterica caudalis(図662, 666)

 この動脈はかなり太いものであるが,上腸間腸動脈に比べるとずっと細い.というのはこの動脈はただ結腸の下半と直腸の大部分を養っているだけだからである.これは腹大動脈の下1/3の初まりの部分,つまり第3腰椎または第3と第4腰椎のあいだで始まる(Heidsieck).まず左下方にすすみ大動脈の近くで左腸骨窩にはいる.

 左腸骨窩で上行枝を出し,ついで左総腸骨動脈の上を越えて,直腸の後壁に付いて小骨盤にはいる.この動脈は3本の枝を出す.

a)左結腸動脈A. colica sinistra.左結腸動脈は腹膜の後方で左の腎臓の前を左上方に向かって下行結腸に走り,遅かれ早かれ上行枝と下行枝に分れ,上腸間膜動脈の枝と同じような動脈弓を腸管の近くで作っている(図666).

 上行枝は中結腸動脈とつながる.下行枝はS状結腸に向い次に述べる動脈の最初の枝と結合する.

b)S状結腸動脈Aa. sigmoideae.S状結腸動脈は斜め下方にすすんでS状結腸にいたる.一部は附近の動脈とつながり,一部は小さい係蹄を作り,そこから腸にいたる細い動脈が出る.

c)上直腸動脈A. rectalis cranialis.上直腸動脈は下腸間膜動脈の終枝であって,直腸の後で小骨盤にはいり,初めは直腸間膜のなかを走り,2本の枝に分れて直腸の両側で下方にすすみ,多くの小さい枝を直腸にあたえている.これらの枝は内肛門括約筋のあたりに達するまでの部分でかなり規則正しい間隔をおいて出てたがいに横につながっている,それゆえもっと上方にある動脈弓とよく似た関係である.終りの方の枝は下方に向かって凸の係蹄を作り,肛門動脈の枝とつながっている.

消化管に沿う動脈の縦のつながり

 消化管に分布している動脈はこの管の広がりの全体を通じて末梢性の動脈吻合によってたがいにつながっている.上下の腸間膜動脈からでる小腸および大腸の動脈は直腸,結腸,空回腸に沿って,たがいに連なり合う1連の末梢性動脈弓を作り,この動脈弓は内腸骨動脈から発する直腸の動脈と直腸の下端で吻合している.上下の膵十二指腸動脈はこの結合をさらに上方に続けるもので,これが腹腔動脈と上腸間膜動脈との連続を癒している.また腹腔動脈の諸枝が胃の周りの動脈弓を作る.さらに噴門部では胃の動脈弓と食道の動脈の間につながりがある.食道の動脈はずっと続いた網を作って咽頭まで達している.このようにして側副循環路ができており,これによって外頚動脈の血液と内腸骨動脈の血液とがまじる.またこの仕組みによってこの縦の長いつながりをなしている各々の部分がほかの近くの部分のかわりに働くことができる.

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最終更新日13/02/03

 

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