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e) 尾動脈Aorta caudalis (図666, 667, 669)

 これは腹大動脈の末端の背側からおこる小さな枝の形をしている.そこから出て第5腰椎の前と仙骨の前を下行して尾骨にまでいたる.

 尾動脈は壁側枝と臓側枝を送り出す.

臓側枝

 多数の小枝で直腸間膜のなかを前方にすすみ主として直腸の後壁に枝分れする.

壁側枝

 これには最下(第5)腰動脈と仙骨枝とがある.

1. 最下腰動脈Arteria lumbalis ima(図662)

 これは上述の腰動脈と同じような関係をなし,多くの場合いくぶん細いだけである.左右とも腸腰筋のなかで背枝と脊髄枝とに分れる.

2. 仙骨枝Rami sacrales(図669)

 仙骨の個々の部分に相当して出てゆく枝で,対をなしており,仙骨の前面で枝分れして,内腸骨動脈の枝である外側仙骨動脈Aa. sacrales lateralesとともに細い尾動脈の補いをしている.それゆえ外側仙骨動脈の枝が背枝を出しているのが普通である.

 変異:ときどき尾動脈が外側にかたよっていて一見左右の総腸骨動脈のうちの1本(たいてい左側の)から出ているごとく見えることがある.ところがこの場合は腹大動脈から左右の総腸骨動脈が違う高さで出ているためであることが容易にわかる.

 すなわち尾動脈が左総腸骨動脈から出ているように見えるのは左総腸骨動脈の大動脈からの起始が右総腸骨動脈の起始より.やや下方にあるに過ぎない.

尾骨動脈糸球Glomus coccygicum, Steißdrüse (図667)

 最後に尾動脈は左右の前仙尾筋の腱が尾椎の先端でたがいに合しているところにはいってゆき,腱と腱のあいだの隙間で糸玉のように強くふくれたものを作る.これが尾骨動脈糸球Glomus coccygicumの主な基礎である.

これには主要な小結節のそばにいっそう小さい幾つかの副小結節があるのが常である.

 Schumacherの研究(Arch. mikr. Anat., 71. Bd.,1908)によると尾骨動脈糸球は動静脈吻合の1つである.これはそこにはいってゆく動脈と,特別な構造の壁をもつ吻合血管の糸球状の塊り,およびそこから出る静脈とからなりたっている.この静脈は中仙骨静脈 に開いている.

 糸球にはいる動脈およびこれから出てゆく静脈は非常に弱い筋層しかもっていない.糸球をなす血管の壁は内皮の管と数層の円形細胞からできていてその間に結合組織線維がある.

[図667] 尾骨動脈糸球Glomus coccygicum 尾椎の前面(Luschkaによる)

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最終更新日13/02/03

 

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