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 変異:内腸骨動脈はその分岐部までの長さに1cmから6cmまでの開きがあり,概してこの動脈が長ければそれだけ総腸骨動脈の方が短く,またその逆も成り立つのである.前方と後方の主枝に分かれる場所が上方,あるいは下方にずれていることがあり,その場所として仙骨の上縁から大坐骨切痕の上縁までの相違がありうる.まれに内腸骨動脈が欠如していることがあって,その時には総腸骨動脈が骨盤内に入ってつくる1つの動脈弓がその代りを勤めている.ついでこの動脈弓のつづきが外腸骨動脈として血管裂孔を通って大腿に達する.このような場合には普通ならば内腸骨動脈から出る枝がこの動脈弓から起こっているのである.

[図668] 女の骨盤の動脈左側 右からみる.(1/3) 子宮と直腸は右前方に引き寄せてある. 1 第5腰椎;2 仙骨;3 恥骨結合;4 仙骨神経叢;5梨状筋;6仙棘靱帯;7 直腸;8 臍胱;9 子宮;10腱;11卵管;12卵巣;13左子宮広ヒダ (一部切除);14 総腸骨動脈;15 卵巣動脈;16外腸骨動脈;17内腸骨動脈;18 臍動脈;19 閉鎖動脈;20子宮動脈;21腟動脈;22 上臀動脈と外側仙骨動脈;23 下弯動脈;24 内陰部動脈;25 後直腸動脈

臓側枝
1. 臍動脈Arteria umbilicalis (図668, 669)

 この動脈は胎生期には内腸骨動脈の主枝であったものである.前方に曲がって臍胱の側方にいたり,そこから前腹壁の後面を腹膜に被われて臍に向かって上っていく.

 脾では左右のこの動脈が鋭い角度を作って集まる.そして臍静脈に接して臍帯の中でこの静脈のまわりをラセン状にとり巻いて胎盤に走る.そして胎盤では特別な発達をした閉鎖した毛細管系になって,ここで母体の血液から栄養物質と酸素をとり,老廃物を送りだして,かくして新鮮な性状となった血液が臍静脈によって胎児の体に導かれる.

出産後には,小児の腹腔中にあるその大部分が血液を通さなくなり,索状物に変わって左と右の臍動脈索Chorda a. umbilicalisとなる.

 しかし,この動脈の初まりの部分はある程度血液が通ずる状態になっており,そこから上臍胱動脈が出ている.

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最終更新日13/02/03

 

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