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ついで下弯動脈と分れて坐骨棘を廻り,小坐骨孔を通って坐骨直腸窩に達し,坐骨結節の内側を坐骨枝の恥骨部に沿って前方に走る.その経過のうち内閉鎖筋膜によって内側から被われている.

 尿生殖隔膜の後縁で内陰部動脈は内閉鎖筋膜から分れ,鋭角をなして陰茎動脈と会陰動脈とに分岐する(図670).陰茎動脈はすぐに尿生殖隔膜の上に達し,その外側縁で外尿生殖隔膜筋膜によって作られた鞘の中に包まれている.ついでふたたびこの鞘を出てその終枝である陰茎背動脈と陰茎深動脈とに分れる.

 この動脈の最初のところは骨盤のなかにあって直腸の外側面に接しており,また梨状筋と仙骨神経叢の内方にある.それより先きは陰部神経と内陰部静脈を伴っている.坐骨棘のところでは大臀筋の起始部によって被われている(図675).

 その走行中にはかなり多数の枝を出す.また骨盤内にあるあいだにしばしば後直腸動脈を出し,ついで小枝を神経の幹と膀胱に送り,さらに筋枝を近くの諸筋に送っている.1本のかなり太い枝が坐骨結節と大転子のあいだで下啓動脈および内側大腿回旋動脈と吻合している.

この動脈の枝には次のものがある.

a)肛門動脈Arteria analis (図670, 671)

坐骨結節の後で始まり内閉鎖筋膜を貫いて横走し,坐骨直腸窩の脂肪組織の中を通って内側にすすむ.脂肪組織,肛門挙筋,肛門括約筋およびその付近の皮膚を養い,他側の同名動脈とつながり,また下直腸動脈,外側仙骨動脈と結合する.

b)会陰動脈Arteria perinealis (図670, 671)

 この動脈は肛門動脈の次に尿生殖隔膜の後方で始まり,浅会陰横筋の外方を通つたり,あるいは内方を通つたりして前内側にすすみ,この筋および外肛門括約筋,球海綿体筋,坐骨海綿体筋に小枝をあたえ,なん本かのわりあい太くて長い枝である陰嚢動脈Aa. scrotalesとなって陰嚢の後壁および陰嚢中隔に達する.

c)陰茎動脈Arteria penis(図670, 671)

 この動脈は尿生殖隔膜の後縁またはこの隔膜の内部で1本の枝を前内側に向かって送りだしている.すなわち

a)尿道[海綿体]球動脈A. bulbi urethrae(図671).これは尿道海綿体球にいたり,また尿生殖三角のなかに含まれる深会陰横筋,尿道の隔膜部,尿道球腺に分布する.尿道海綿体球に入る枝はすぐに1群の枝に分れる.そして1本の小さい前方の枝が尿道海綿体に達して次にのべる尿道動脈とつながっている.尿道球動脈は会陰動脈から出ていることがまれではない.

β)尿道動脈A. urethralis.この動脈は前者よりおよそ2cm前方で陰茎動脈の幹から出ており,尿道球動脈より細くて,左右の陰茎海綿体脚が相合するところで尿道海綿体のなかにはいる.これは陰茎亀頭まで達しそこで陰茎背動脈および陰茎深動脈の枝とつながる.

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最終更新日13/02/03

 

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