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II. 女の場合(図672)

 女の内陰部動脈は男のよりも細いが,相同の枝をもっている.肛門動脈と会陰動脈は男の場合と同じ場所に向かって走っている.陰嚢動脈に相当するのは陰唇動脈Aa. labialesであり,尿道[海綿体]球動脈に相当するのが[]前庭球動脈A. bulbi vestibuli vaginaeである.陰核動脈A. clitoridisは陰茎動脈に相当していて,陰核背動脈A. dorsalis clitoridisと陰核深動脈A. profunda clitoridisに分れるが,これらは陰茎のこれに相当する血管と同じ関係にあり,ただそれよりはるかに細いだけである.

 変異:内陰部動脈がときとして非常に細くて前方にまで達する枝を出さないことがある.この場合にはその代りをして副陰部動脈A. pudendalis accessoriaがある.このときには,内陰部動脈が多くは尿道球動脈で終わっている.それよりいっそうまれには会陰動脈で終わっている.副陰部動脈は骨盤のなかで内陰部動脈の初まりの部分か,あるいは内腸骨動脈じしんから出ているが,それも独立して出ていたり,ほかの枝といっしょに出ている.ついでこの動脈は膀胱底と前立腺に沿って骨盤のなかを前方にすすみ,尿生殖隔膜の前方部を貫いてその枝に分れている.ときとして1本の副陰部動脈が左右の陰茎深動脈を出し,もう1本別の副陰部動脈が左右の陰茎背動脈を出している.また補充する動脈が内陰部動脈のただ1本の枝の代りをしているだけのこともある.

 尿道球動脈がときどき非常に細くなっていたり,またはその1側のものが全くないことがある.ほかの例ではこの動脈がずっと後の坐骨直腸窩において始まり,後方から尿道海綿体球にはいっている.

 陰茎背動脈はときとして大腿深動脈から出て上内側に曲り,陰茎楓こ達している.

壁側枝
1. 腸腰動脈Arteria iliolumbalis (図662, 669)

この動脈はその走行と分枝の関係が部分的に腰動脈と一致しているが,その分布区域の広さは第5腰動脈の発達と逆の関係にある.内腸骨動脈の後方の主枝から始まり,ただちに腰筋と総腸骨動静脈の後を通って腸骨窩に向かっている.

 腰筋の内側縁で腰枝Ramus lumbalisという1本の上行枝を出している.腰枝は第5腰椎と第1仙椎とのあいだの椎間孔に1本の脊髄枝Ramus spinalisを送っている.そのほかの枝は大腰筋,腰方形筋,腹横筋の中に分布する.幹のつづきは腸骨枝Ramus ilicusとよばれて,浅枝と深枝とに分れる.浅枝は腸骨稜の下で腸骨筋の自由面の上において深腸骨回旋動脈の1枝と合し動脈弓を作り,これから上下へ筋枝を出している,深枝は骨膜と腸骨のなかに分枝し,さらに閉鎖動脈と吻合している.

 腸腰動脈はときどき初めから2本の枝に分れて出ている.

2. 上臀動脈Arteria glutaea cranialis (図668, 669, 674, 675)

 上臀動脈は内腸骨動脈のいちばん太い枝であって,主として弯部の筋に分布している.梨状筋の上方で骨盤の外に出るが,その途中で梨状筋・内閉鎖筋・肛門挙筋に枝をあたえ,ついで梨状筋の上縁と中臀筋の下縁のあいだにある隙間を通る.そして寛骨に1本の栄養動脈をあたえ,かつ浅枝R. superficialisと深枝R. profundusとに分れる.

a)浅枝R. superficialisは多数の枝に分れて大臀筋と中殿筋を養い下弯動脈の枝とつながる.

b)深枝R. profundus(図675)は中臀筋と小臀筋のあいだにあって弓を画いて前外側に走り,ふたたび2本の枝に分れる.そのうちの上枝は小臀筋の上縁に沿ってすすみ,この筋と中臀筋のあいだで大腿筋膜張筋にまで達し,これらの筋を養いさらに前方で深・浅の両腸骨回旋動脈,腰動脈,腸腰動脈とつながっている.

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最終更新日13/02/03

 

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