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4. 下臀動脈Arteria glutaea caudalis(図668, 669, 674, 675)

 下臀動脈は内腸骨動脈の2番目に太い枝であって,やはり主として臀部の筋に分布するものである.梨状筋と仙骨神経叢の前面を下方に走り,坐骨神経と内陰部動脈に伴われて梨状筋の下方をへて骨盤の外にでる.骨盤の外では坐骨結節と大転子とのあいだにあって,大臀筋によって被われている(図675).

 この血管の枝は大臀筋の後下部に広がり大腿の回転筋群と股関節のなかで上臀動脈の枝と吻合している.また閉鎖動脈の深枝および内側大腿回旋動脈とも吻合する.1本の比較的太い枝と数本の細い枝が下方にすすんで大腿の屈筋群と大内転筋にいたる.それに属すもので細いが興味のある枝が坐骨神経伴行動脈A. comitans n. ischiadidであって,たいてい大腿の下部まで坐骨神経に伴行している.下臀動脈の枝は内側大腿回旋動脈の枝および大腿深動脈の穿通動脈と吻合する.そのほかの1枝は内側に向かって尾骨にいたり,坐骨直腸窩の皮膚と脂肪組織とを養う.

 変異:非常にまれなことであるが,坐骨神経伴行動脈が太い血管となっていて,両棲類.爬虫類・多くの・鳥類と同じく下肢の自由部の主動脈となっていることがある.ついでこの動脈は膝窩動脈とそのすべての枝に続くので,このような場合には下肢の遠位2/3は内腸骨動脈からの血液を受けることになる.哺乳類の発生初期にも坐骨動脈A. ischiadicaが下肢の自由部の主動脈となっていて,その後の時期にいたってそれまで膝窩動脈と吻合している1筋枝に過ぎなかった大腿動脈がそれにとって代るのである.Nauckは(Z. Anat. Entw., 68. Bd.,1923)骨盤の位置の変化が坐骨動脈に対してその血流を阻止するように働くので,そのためにこの変換が起るのであると説明した.

5. 閉鎖動脈Arteria obturatoria(図668, 669, 674)

 この動脈は内腸骨動脈の前方の枝に属しているもので,骨盤壁の内面を前方にすすみ,閉鎖管にはいる.この管を通って骨盤を出て,その外で浅枝Ramus superficialisと深枝Ramus profundusという終枝に分れる.

 骨盤のなかを走っているときは骨盤筋膜と腹膜のあいだにあり,この動脈と伴行する閉鎖神経のやや下方にある.その終りの分岐は閉鎖孔を出てすぐのところで起る.

 骨盤のなかで閉鎖動脈から幾本かの細い枝が出ているが,そのほかにたいていこの動脈から外側に向う1本の太い枝がでて腸骨筋膜を貫き,腸骨筋に枝をあたえ,腸腰動脈とつながっている.その他の小さな枝が腰部のリンパ節,骨盤の内臓,肛門挙筋および内閉鎖筋にいたる.

 閉鎖管にはいる前に鋭い角をなして恥骨枝R. pubicusが出る.これは恥骨枝(という骨).の結合部の後面を恥骨結合にまですすみ,枝分れして反対側の同名枝と網を作って結合する.恥骨枝の1本の枝は下腹壁動脈の閉鎖枝R. obturatoriusと前腹壁の内面でつながっている.

 浅枝R. superficialisは閉鎖管の外側の出口のところで外閉鎖筋の後を内側に向い,内側大腿回旋動脈と共に外閉鎖筋と内転筋群の近位部のなかで枝分れし,外陰部の皮膚にまで達している.

 深枝R. profundusは坐骨結節と寛骨臼のあいだの溝を後方にすすみ,下胃動脈と共に枝分れして臀部の筋の深層を養っている.寛骨臼枝Ramus acetabularisという1枝を出し,これは寛骨臼切痕を通り,それから出る枝が大腿骨頭靱帯をへて大腿骨頭に達し,大腿骨頭窩で係蹄状にまがって静脈に移行する(Hyrtl).

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最終更新日13/02/03

 

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