Band1.621   

a)内側大腿回旋動脈Arteria circumflexa femoris tibialis

 この動脈は腓側大腿回旋動脈より細くて,内転筋群の上方を腸腰筋と恥骨筋のあいだで大腿骨頚の内側面に付いて内側かつ後方にすすみ,大転子窩のところにまで達し,そこで腓側大腿回旋動脈の枝と吻合する(図673, 675).

 外閉鎖筋とともに後方にすすみその腱のところで2本の主枝に分れる.その浅枝Ramus superficiaIisは短内転筋,大腿薄筋,外閉鎖筋に枝分れする.深枝Ramus profundusは小転子の下を後方にすすみ,大腿方形筋,大内転筋および屈筋群を養っている.しばしば深枝は1本の寛骨臼枝Ramus acetabularisを閉鎖動脈の同名枝とともに,あるいはその代りとして寛骨臼切痕をへて股関節にあたえている.

b)腓側大腿回旋動脈Arteria circumflexa femoris fibularis

 これは太い枝で,大腿深動脈の外側壁からこの動脈の起始の近くで出ている.縫工筋に被われ,また大腿神経の枝のあいだにあって,大転子の下方を外側に向い,上行枝R. ascendensと下行枝R. descendensを出し,横にすすんで中間広筋の上を越え,外側広筋を貫いて大転子の下で骨に達し,後方で内側大腿回旋動脈,上下の両磐動脈および大腿動脈の枝のうち後方の筋に達するものと結合している(図673, 674).

α. 上行枝R. ascendensは縫工筋と大腿直筋とにおおわれて上方に向い,大腿筋膜張筋の下で見えなくなる.

β. 下行枝R. descendensは太い枝で1本のこともあり,またしばしば2本以上である.大腿部の前がわで大腿直筋の後において枝分れし,筋群のなかをへて,その一部は膝関節にまで達している.

c)穿通動脈Arteriae perforantes(図673675)

 穿通動脈は大腿深動脈の終枝を合せて3本ないし5本あって,内転筋群の大腿骨への停止部を貫いて大腿骨の後がわに達する(図566).

α. 1穿通動脈A. perforans prima.これは穿通動脈が3本しかない場合にはそのうちでいちばん太く,恥骨筋の停止の下方で短内転筋と大内転筋を貫いて走り,これらの両筋と大腿二頭筋に枝をあたえ,また近位大腿骨栄養動脈A. nutricia femoris proximalisを大腿骨の上部の栄養孔を通ってこの骨の内部に送っている.

β. 2穿通動脈A. perforans secunda.この動脈は短内転筋の下方で大内転筋を貫いて大腿部の後方の筋群に広がっている.

γ. 3穿通動脈A. perforans tertia. 大腿深動脈の終枝であって,長内転筋の停止の下方で大内転筋を貫き,遠位大腿骨栄養動脈A. nutricia femoris distalisという1本の太い動脈を大腿骨の内部にあたえ,大腿部の後方の筋群の下部,特に大腿二頭筋に分布している.

 これらのすべての枝はたがいに相つながり.また付近の動脈とも結合している.

6. 筋枝Rami musculares(図673, 674)

 大腿動脈はその走行中に6本から8本の筋枝を大腿部の前方の筋群に出している.

 これらの筋枝は主に幹の前壁と内側壁から出ていて,その数と太さはまちまちである.脛側と腓側の両大腿回旋動脈の下行枝が太ければ,それだけ前方の筋群にいたる筋枝が弱いのであって,その逆の関係もみられる.それゆえ筋枝の太さとその分布の広さは大腿回旋動脈の下行枝の形成のいかんによっている.

 S.621   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る