Band1.633   

--足背動脈が主流をなし,弓状動脈がその支流になっていることがあるが,また後者が全部あるいは一部欠けていることもある.主流が第2の骨間隙に達していることもあり,第1と第4の骨間隙を通るつよい流れに分れていることなどがある(H. Meyer).

 変異:後脛骨動脈は膝窩動脈が高位で分岐しているときには普通よりも長くなっている.後脛骨動脈が普通より細くなっていたり,下方で横走する1本または2本の吻合枝によってふたたび太くなっていることがまれでない.ほかの例では後脛骨動脈の続きとしては下腿上部だけに分布するただ1本の筋枝がみられるだけで,下方の枝はすべて腓骨動脈が太くなって,その代りをしている. 腓骨動脈の起始がときどきいっそう下方に移っていて,ほとんど下腿の中央部にあることもあるが.また上方に移っていて前脛骨動脈の起るところか,あるいは膝窩動脈にまでも達していることがある.高位で分岐する例ではしばしば前脛骨動脈が腓骨動脈を出している.腓骨動脈は普通よりも太くなっていることの方が細くなっている場合よりもはるかに多い.太くなっている場合には腓骨動脈がいろいろなぐあいに後脛骨動脈の下方の部分の代理をしている.まれに腓骨動脈が下肢の下端まで達しないで,その分布区域を後脛骨動脈の枝が養っていることがある.前脛骨動脈が細くなっているのを腓骨動脈の前枝(穿通枝)が補つて,それを太くしていることがまれではない.あるいは足背において完全に前脛骨動脈の代りを勤めている.ときどきこの前枝が欠けていてその場所に前脛骨動脈がはいっている.非常にまれに腓骨動脈が全く欠如している.足底動脈弓から出る近位の穿通枝は普通ではあまり太くないが,足背動脈網の発達がよくないさいには太くなっていて,これが背側中足動脈を出している.--足底動脈弓はときとしてほとんど独占的に足背動脈の穿通中足動脈のみによって作られている.このばあい穿通中足動脈が前脛骨動脈の枝であっても腓骨動脈の穿通枝の枝であっても同じことである.ときおり足背動脈が直接に母指の底側指動脈を出している.なおまた2本の底側中足動脈が1本の共通の幹をもって足底動脈弓から出ていることがある.

 日本人ではAdachiによると足背動脈網と足底の浅層の動脈がヨーロッパ人よりも弱く発達し,それに反して足底の深層の動脈はヨーロッパ人より強く発達しているという.

B.大循環の静脈Venen des großen Kreislaufes

 大循環の静脈は本来3つの部からなっている.

a)心臓の静脈系

b)上大静脈系

c)下大静脈系

a) 心臓の静脈Venae cordis, Herzvenen(図633, 635)

 心臓のすべての静脈は直接に心臓に開口し,しかも左心室か右心室に開く若干の細小静脈を除いてはすべて右心房に開口している.

1. 冠状静脈洞Sinus coronarius.心臓の静脈は前心静脈と細小心静脈を除いては1本のかなり太い幹である大心静脈V. cordis magnaと,その続きの冠状静脈洞Sinus coronariusに集まり,その血液は右心房の後部で下大静脈と右房室口のあいだの隅のところに注がれている.大心静脈の冠状静脈洞への移行部は左心房の幅のほぼまんなかに当たっており,ここに2枚の帆状弁からなる弁装置がある.

 冠状静脈洞は大心静脈の終りの部分で,心房の筋肉内に包まれており,以前にあった左上大静脈V. cava cranialis sinistra のなごりである.2つの静脈部が相合する境のところに単一または重複した弁がある.縦の枝が開口するところにもしばしば単一の弁が見られる.

2. 大心静脈V. cordis magna.大心静脈は心尖のところで始まり,そこでは心臓後面の静脈との吻合がある.前室間溝のなかを次第に太くなりながら心室底にすすみ,ついで冠状溝のなかを左かつ後方に向い,最後に冠状静脈洞に移行する.

S.633   

最終更新日13/02/03

 

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