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 前室間溝の中では左右の心室および中隔からの枝を受ける.水平に走るところでは左心房と左心室からの枝が大心静脈にはいっている.左心室の左縁では左心室からのかなり太い枝がこれに入る.

3. 左心室後静脈V. dorsalis ventriculi(cordis) sinistri.これは左心室の後面で後室間溝の左側を走り,冠状静脈洞の初めの部分に開口する.

4. 後心室間溝静脈V. interventricularis dorsalis cordis.これは心室の後室間溝の中を冠状静脈洞にすすむが,ときには独立して冠状静脈洞のそばで右心房に開口する.

5. 小心静脈V. cordis parva.小心静脈は右心房と右心室との後面にある何本かの小静脈が集まってつくる小幹で,後面の冠状溝で右の部分を走り,冠状静脈洞かあるいは直接に右心房に開口する.

 心臓の静脈の枝は一般に動脈の通路に伴っている.例外的には1本の動脈が2本の静脈を伴うが,ただ1本の静脈を伴う方が普通である.

6. 左心房斜静脈V. obliqua atrii sinistri.これは冠状静脈洞と同じく左上大静脈のなごりである.この静脈は左上大静脈が閉鎖してできた靱帯,すなわち左上大静脈靱帯Lig. venae cavae sinistraeを含んでいる心膜嚢のしわのところで始まり,左心房の後面の上を斜めに左から右へ走り,弁をともなわずに冠状静脈洞に合する.これはたいてい細い静脈である.

7. 前心静脈Vv. cordis ventrales.1本または2本以上の細い静脈で右心室の前壁にあり,右心房の前縁に開口する.

8. 細小心静脈Vv. cordis minimaeは非常に細い静脈で,左右の心房と心室に直接(細小心静脈孔Foramina venarum minimarumをへて)開口している.この静脈は左右の心房の壁と心房中隔の壁にもっとも数が多い.

 変異:L. von Davidaは心臓の2~3本の静脈が上大静脈の終りの部分に開口しているのを記載した.Z. Anat. u. Entw., 68. Bd.,1923.

b) 上大静脈の領域

 概説:上大静脈は大動脈弓と下行性の胸大動脈が枝を送る全領域からの血液をほとんど正確に集めている.だからその根は頭部,頚部,胸部および上肢に広がっている.これらの根は右縦胸静脈を除いてすべて下頚部に向い,そこで左右各側まず1本の腕頭静脈という共通の幹に集まる.

1. 上大静脈Vena cava cranialis(図600, 690)

 上大静脈の幹は胸骨の右縁のそばで,右の第1肋軟骨のすぐ後下方で,左右の腕頭静脈が合流してできあがる.

 局所解剖:右側に軽く凸の弓を画いて曲りながら,胸骨の右側を大動脈の右において心底に向かってすすみ,短い経過ののちに右の第3胸肋関節の下縁のところで右心房に入る.すでに第2肋骨の高さでこの静脈は心膜によって不完全に包まれる.右側は胸膜の縦隔部で被われ,また右肺に策している.左側には上行大動脈があり,また下行するうちにその後方にある右肺根の諸成分と交叉する.また右側には右の横隔神経が下方にすすんでいる.上大静脈は弁を持つていない.

 心膜嚢にはいる直前に後方からくる右縦胸静脈を受け入れ,それを介して下大静脈と結合している.

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最終更新日13/02/03

 

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