Band1.635   

 上大静脈の幹に礪そのほかにすぐそばにある心膜静脈前縦隔静脈Vv. pericardiacae et mediastinales ventralesからの細い枝がはいるだけであるが,またときには太い右内胸静脈もはいっている.

 変異:非常にまれに上大静脈の幹が上方の右肺静脈を受け入れている.

2. 腕頭静脈Venae brachiocephalicae(dextra et sinistra) (図600, 690)

 この静脈は頭部と頚部と上肢の血液を集めていて,弁を持つていない.胸鎖関節の後で内頚静脈と鎖骨下静脈とが合してできあがる.その初まりのところから右第1肋軟骨の内側端の下縁に向かってすすみ,ここで左右のものがほとんどたがいに直角をなして合して大静脈となる.

 右腕頭静脈V. brachiocephalica dextraは非常に短くて,ほぼ垂直に走り,その右側は胸膜嚢と右肺尖に接している.

 左腕頭静脈V. brachiocephalica sinistraは右腕頭動脈のおよそ3倍ほどの長さがあり胸骨柄の上部の後方をやや下方に向い左から右に走っている.胸骨柄の上部とは縦走する舌骨筋群の起始部のみによって隔てられている.そのさい大動脈弓から出る諸枝の上に直ぐに接しており,しかも大動脈弓のいちばん高い所にのっている.

 変異:まれに左右の腕頭静脈が別々に右心房に入る.

 腕頭静脈は次の諸静脈を受け入れている.

a)下甲状腺静脈,最下甲状腺静脈Vv. thyreoideae caudales, V. thyreoidea ima.これらの静脈は不対甲状腺静脈叢Plexus thyreoideus imparから出ているが,この静脈叢は甲状腺の下部をしめて,気管の前面に接していて,また下喉頭静脈V. laryngica caudalisをも受け入れている.この静脈叢からは2本あるいは3本の静脈が出ていて,そのうち右方のものは軽く右にまがって,右腕頭静脈かそれよりまれに上大静脈に開口する.一方左のものと,もし存在するときは中央にある最下甲状腺静脈V. thyreoidea imaも,左腕頭静脈にいたり,これに注いでいる.これらの静脈はたいていたがいにつながりあっている.

 下甲状腺静脈はときとして内頚静脈にも開口する.

b)多数の小枝が縦隔にある諸器官がら来ている.すなわち胸腺静脈Vv. thymicae,心膜静脈Vv. pericardiacae,上横隔静脈Vv. phrenicae thoracicae,前縦隔静脈Vv. mediastinales ventrales,前気管支静脈Vv. bronchales ventrales,気管静脈Vv. tracheales,食道静脈Vv. oesophagicaeである.

c)椎骨静脈V. vertebralisは後頭骨のところで始まるが,そこでときとして後頭静脈とつづき,さらに1本の細い枝を介して導出静脈とつながっている.椎骨静脈はたいてい1本,まれに2本あって,椎骨動脈に伴って上から6つ,または7つ全部の頚椎の肋横突起孔を通り,動脈の周囲で静脈叢を作っている.そして椎骨静脈はかなり太い血管となって,多くのばあい腕頭静脈の上端に開口する,その途中で大後頭孔と椎間孔を通ってやって来る脊柱管の静脈叢からの流れを受け入れ,また後頭下静脈叢Plexus venosus suboccipitalisとつながっている.しばしばこの静脈の下端のところに深頚筋の前面からくるもう1つの静脈が開口している.

d)深頚静脈V. cervicalis profunda.深頚静脈は項筋の深層の上を横突後頭筋に被われて軽くうねりながら,後頭部から下方に向かって走り,通常これより細い椎骨静脈と結合している.それよりまれに直接に腕頭静脈とつながっている.またすぐ近くの頚静脈叢ともつづいている.

e)内胸静脈V. thoracica interna.開口部の近くでは1本であるがそのほかのところは重複していて,同名動脈の両側を走る.この静脈は上腹壁静脈Vena epigastrica cranialisをもって始まり,上腹壁静脈はさらに腹皮下静脈Vv. subcutaneae abdominisを受け入れている.

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最終更新日13/02/03

 

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