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また他側の同名静脈とつながり,肋軟骨の後,胸膜の肋椎部の前を上方に行き,臓側枝を除く同名動脈のすべての枝に伴っている.臓側枝に相当する静脈は直接に腕頭静脈に入るか,あるいは上大静脈に開いているのが常である.ときとして右内胸静脈も上大静脈じしんにはいっている.

f)最上肋間静脈V. intercostalis suprema.この静脈は左右において全く同じようにはなっていない.右最上肋間静脈は第1だけかあるいは第1と第2,ときとしては第3までの胸分節の静脈をとり入れて,右腕頭静脈か上大静脈に開口し,それ以下の分節の静脈,あるいは右縦胸静脈とつながっている.

 左最上肋間静脈は左の縦胸静脈の広がりかたによって太さが異なっている.これはたいてい胸部上方の第1から第3,または第4までの分節静脈を受け入れ,ついで普通は左気管支静脈を前もって合せたのち,脊柱から左の腕頭静脈に向かっている.この静脈はさまざまな形をとって左右の縦胸静脈とつながっている.

3. 内頚静脈Vena jugularis interna(図680682)

 この静脈は頚静脈孔の後部の比較的広いところで漏斗状に広がった頚静脈上球Bulbus cranialis v. jugularisをもって始まり,内頚動脈のすぐ近くを下方にすすむ.そのさい初めは内頚動脈のうしろにあるが,ついでその外側にいたり,舌骨の大角のところで顔面静脈V. facialisを受け入れる.さらに総頚動脈の前外側で中頚筋膜に被われて下行し,胸鎖関節のうしろにある鎖骨下静脈との合流点に向かってすすみ,ここで内頚静脈弁膜球Bulbus valvularis venae jugularis internaeを作っている.この弁膜球は単一または2つの部分からなる弁で上方を仕切られている.

 ときとしてこの弁は鎖骨下静脈と内頚静脈とが合する角のところにある.また上方に2部に分れた弁があり,下方に単一弁のあることもある.右の弁膜球はたいてい左のよりも大きい.

 頚静脈上球には脳硬膜のS状静脈洞および蝸牛小管静脈Vena canaliculi cochleaeが開口し,またまれに下錐体静脈洞が開いている.またそれよりいっそうしばしば頚静脈上球が舌下神経管静脈網とつながっている.

 こうして内頚静脈は頭蓋腔からの血液の大部分を導きだしているが,頭蓋腔内の静脈血は左右の内頚静脈のみによって独占的に導きだされているのではなく,一部はもっと細い何本かの静脈によるのである.しかしとにかく左右の内頚動脈および椎骨動脈とによって頭蓋腔内の諸構造に送りこまれた血液のほとんど大部分が内頚静脈を通って戻るのである.多数の細い連絡路が頭蓋腔の静脈洞と外面の静脈とを連ねていて,これらは一部は直接に導出静脈を通り,また一部は板間静脈によって仲だちされている.--Hansberg, Z. Ohrenheilk.,1903.

 頭蓋腔と顔面静脈からの血液のほかに,内頚静脈はなお咽頭・舌・喉頭ときには甲状腺からの血液も受け入れている.

a)咽頭静脈Vv. pharyngicae.咽頭静脈は咽頭の後壁と外側壁において咽頭静脈叢Plexus pharyngicusから出る.咽頭静脈叢はその近くにある耳管・口蓋帆・およびこれらに関係のある筋の静脈とつながり,また翼突管静脈V. canalis pterygoideiを受け入れている.咽頭静脈はたいてい内頚静脈の幹にはいる.またときにはその付近の静脈と結合して,かくて内頚静脈の幹に入り,または頚部にあるそのほかの静脈幹に達している.咽頭静脈叢は翼突筋静脈叢や椎骨静脈叢につながっている.

 Elzeは(Anat. Anz., 51. Bd.,1918)前・後咽頭食道静脈叢Plexus pharyngooesophagicus ventralis, dorsalisという前方と後方の静脈網が咽頭の喉頭部の粘膜下組織にあることを記載した.後方の静脈網の血液は咽頭静脈叢にいたり,前方の静脈網の血液は上喉頭静脈に達する(Elze u. Beck, Z. Ohrenheilk., 77. Bd.,1918).

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最終更新日13/02/03

 

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