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2. 前側頭板間静脈・後側頭板間静脈 V. diploica temporalis anterior et V. diploica temporalis posterior.前者は深側頭静脈のうちの1本と蝶頭頂静脈洞とに開口する.後者は乳突導出静脈をへて耳の後方にある静脈および横静脈洞に開口する.中側頭板間静脈V. diploica temporalis mediaが存在するばあいは,これは前頭骨と頭頂骨の境のところにあって,たいてい上錐体静脈洞とつづいている.

3. 後頭板間静脈V. diploica occipitaIis.これは後頭静脈あるいは横静脈洞に入るか,または後頭導出静脈をへて後頭静脈と静脈洞交会とに同時に入っている.

 前頭板間静脈と前側頭板間静脈,もしくは前・後または前・中・後の側頭板間静脈がたがいに合流することにより,あるいは左右の後頭板間静脈が不対の1本あ幹をなすことにより幹の数が減少していることが少なくない.

b) 導出静脈Venae emissariae

 いま述べた板間静脈に続くものとして頭蓋腔の導出静脈がある.これは骨を貫いて,頭蓋の内と外の静脈をたがいにつないでいる.この静脈にはかなり太いものがあり,細いつながりにすぎないものもある.ところで,この静脈は内部の静脈(特に静脈洞)へ血液を導き入れるよりは,むしろ外部へ導き出す役目をしているようで,それゆえ内腔が充満し過ぎたばあいに1種の安全弁としてはたらくのである.板間静脈の一部がこの導出静脈に開口している.

α. 破裂孔導出静脈Emissarium foraminis laceri.海綿静脈洞と翼突筋静脈叢とをつなぐ静脈で破裂孔を通る.

[図683] 頭蓋骨の板間静脈. 外板を取り除いて板間静脈を示してある.1. 冠状縫合;2. 人字縫合;3. 頭頂側頭縫合;4. 前頭板間静脈;5. 前側頭板間静脈;6. 中側頭板間静脈(蝶形骨大翼の後端に進入する);乳後側頭板間静脈(乳突孔で終る);8. 後頭板間静脈

β. 卵円孔静脈網Rete foraminis ovalis.上と同じような静脈のつながりで海綿静脈洞と翼突筋静脈叢との間を結ぶものであり,卵円孔を通っている.

γ. 内頚動脈静脈叢Plexus venosus caroticus internus.内頚動脈にまつわりついている静脈叢であって,海綿静脈洞と翼突筋静脈叢とをつないでいる.

δ. 頭頂導出静脈Emissarium parietale.浅側頭静脈と上矢状静脈洞とのつながりであって頭頂孔を通る.

ε. 乳突導出静脈Emissarium mastoideum.S状静脈洞と後頭静脈とをつなぐもので,乳突孔を通る.

ζ. 舌下神経管静脈網Rete canalis n. hypoglossi. 前椎骨静脈叢と内頚静脈上球とをつなぐもので,舌下神経管のなかで舌下神経にまつわりついている.

η. 顆導出静脈Emissarium condylicum.S状静脈洞と椎骨静脈叢とをつなぐもので顆孔Foramen condylicumを通る.

θ. 後頭導出静脈Emissarium occipitale.静脈洞交会と後頭静脈とをつなぐものである.

c) 硬膜静脈Venae meningicae

 脳硬膜の静脈はだいたいに中硬膜動脈A. meningica mediaの分布と一致している.中硬膜動脈は2本の静脈を伴い,この静脈はふつう棘孔Foramen spinaeをへて側頭下窩の静脈叢に達する.

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最終更新日13/02/03

 

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