Band1.643   

ε. 下小脳静脈Vv. cerebellares inferiores.小脳の下面からおこり,概して外側にすすみ,その血液は主に横静脈洞・S状静脈洞・下錐体静脈洞に注がれる.

ζ. 内大脳静脈Vv. cerebrales internaeは第三脳室脈絡組織のなかにある.大脳の深部にある大きい灰白質塊からの血流を導きだしている.室間孔のところで視床線条体静脈Vena thalamostriataと脈絡叢静脈Vena chorioideaとが合してできる.視床線条体静脈は分界条の下で尾状核と視床核の境にある.そしてこれらの2つの大きな核からの血液を集めて,透明中隔のところで透明中隔静脈Vena septi pellucidiを受け入れている.脈絡叢静脈は側脳室脈絡叢の縁に沿って走り,このものからの血液を導き出している.左右の内大脳静脈はきれいな弯曲をなして脈絡組織のなかを後方に走り,そのさい近くの部分から来る多数の細い静脈を受けとる.内大脳静脈に入る最後のかなり太い枝が脳底静脈Vena basialisであって,脳の下面で始まり,大脳脚の周りをめぐってすすみ,レンズ核と灰白隆起からの静脈を受け入れている.

η. 大大脳静脈V. cerebralis magna. 左右の内大脳静脈が合同することによって生ずる.これは約lcmの長さと5~8mmの巾をもち,脳梁の下面と四丘板の上面のあいだに入って,小脳天幕の前縁に達し,直静脈洞につづく.

θ. 眼硬膜静脈V. ophthalmomeningica.これは脳の下部の静脈で,上眼静脈(いっそうまれに下眼静脈)または下錐体静脈洞に開口している.

e)硬膜静脈洞Sinus durae matris(図685, 686)

 すでに述べたように,頭蓋腔の血液は主として頭蓋の内面にある空所に集まるが,これらの空所は円蓋部,脳底部,中部の3群に分けられる.この空所はすべて強い線維性の膜である硬膜Dura mater, harte Hirnhautの両葉のあいだにあって,硬膜静脈洞Sinus durae matrisとよばれるのである.

 丈夫な壁でまわりを囲まれ,圧力から護られているこれらの空洞内の血流は概して前上方から後下方に向うのである.しかしその一部の道は頭蓋の後壁から前方に向かっている.そしてすべての静脈洞の主な流れは各側の頚静脈孔を通って外にでて内頚静脈上球にいたる.つまり数多くの静脈洞とこれに流れこむものの全部が内頚静脈の根をなしているのである(640頁参照).

1. 上矢状静脈洞Sinus sagittalis superior(図685,1, 686)

 これは大脳鎌の上縁のなかに埋もれていて頭蓋頂の内面に沿って前から後に走る,そして前は前頭骨の盲孔で始まり内後頭隆起のところまで伸びている.その横断面は下方がより鋭い角をなした三角形である.しかし盲孔のなかではただ硬膜の突起だけとなっている.それから続いて走るあいだに脳の上部の静脈,硬膜と頭蓋骨の何本かの静脈がこの静脈洞に開口する.頭蓋の外面の静脈とは頭頂導出静脈および後頭導出静脈によってつながっている.前方では上矢状静脈洞は非常に狭くなっていて,いつも鶏冠にまでこれが達しているわけではない.後方ではかなり広くなっている.その上壁はへこんでいるが,側壁はまつ直ぐかあるいは軽く突出している.

 この静脈洞の両側には多少の差はあるが概して数の多いクモ膜の増殖部があって,これは血管を欠いており,脳膜顆粒Granula meningica, Arachnoidalzottenまたはパツキオニ顆粒Pacchionische Granulationenとよばれる(神経学参照).

2. 下矢状静脈洞Sinus sagittalis inferior(図685, 2)

 大脳鎌の下縁は凹を画いており,そのなかに小さな静脈洞すなわち下矢状静脈洞が埋まっている.これは下縁の中央のあたりで始まり,この縁が小脳天幕の前縁と合するところまで走る.下矢状静脈洞は大脳鎌内の何本かの静脈によってできており,また多くのばあい脳梁の上面およびそれに接している大脳回から発する少数の細い静脈だけを受け入れている.まれに大脳鎌のなかを走る1本の静脈によって上矢状静脈洞と吻合している.

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最終更新日13/02/03

 

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