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全例の50%において上矢状静脈洞が内後頭隆起の右(この方が3倍も多い)または左にずれて,そのがわの横静脈洞に続いている.後頭静脈洞は左右どちらかの横静脈洞に開口するか,または同時に左右両側の横静脈洞に達している (J. Dumont, Les Sinus postérieurs de la Dure--Mère, Nancy 1894).

 A. Mannu(Internat. Monatsschrift Anat., Phys.1907)は42例を調べてそのうちただ2例だけに本当の静脈洞交会を見た.42例中11例は上矢状静脈洞が右(11例中9例)か左(2例)の横静脈洞に移行しており,そのさい直静脈洞はそれぞれ1本の脚をもって左と右の横静脈洞に開口している.また42例観察したなかで残りの29例は,矢状静脈洞も直静脈洞もそれぞれ太さのたいてい違う右と左の枝に分れて,左右の横静脈洞に流れこんでいる,直径が6~IOmmもある横静脈洞には下大脳静脈,一部の上小脳静脈および若干の板間静脈が開口している.S状静脈洞はまず上錐体静脈洞を受けとり,乳突導出静脈によって頭蓋の外面の静脈とつながり,また顆導出静脈によって脊柱の外側の静脈叢と結合している.S状静脈洞の下端はほとんど直角をなして内頚静脈上球につながっている.

 Bluntschli(Verh. Ges. deutsch. Naturf. Ärzte,1908)は右側の横静脈洞の方が太いのは右側の静脈血の血流がいっそう多いという条件によるものとしているが,Zeiger(Beiträge zur Anat. usw. d. Ohren, usw.19. Bd. )は発育中の脳の圧にその原因があるとしている.

5. 後頭静脈洞Sinus occipitaIis(図685, 7)

 これは多くのばあい単一であって,静脈洞交会か一方の横静脈洞からおこり,小脳鎌の中を大後頭孔の方にすすむ.そこに達する前に2本の脚に分れて縁静脈洞Sinus marginales(図686)となる.縁静脈洞は各側のものが大後頭孔の上を通って頚静脈上球にいたる.そのほか細いがかなり重要な吻合枝,または小さい静脈叢が脊柱管の静脈叢に達している.ときおり後頭静脈洞の重複していることがあり,そのさい各々のがわを走って上に述べたのと同じ点にいたる.

6. 海綿静脈洞Sinus cavernosus(図686)

 これは蝶形骨体の側面で大翼の根の上にあり,上眼窩裂から側頭骨錐体の先端まで伸びている.海綿静脈洞は著しい広がりをもっていて,その形は定まっておらず,多数の結合組織性の索で貫かれ,そのため海綿のような観を呈している.前方では蝶形骨小翼の下に沿って広がっている静脈洞,蝶形[]頭頂静脈洞Sinus sphenoparietalisとつながるが,これは海綿静脈洞の初まりともみなすことができる.また眼窩の静脈すなわち眼静脈ともつながっている.なお海綿静脈洞に太い中大脳静脈が開く(図686).静脈洞の外側壁のなかを動眼神経, 滑車神経, 眼神経が眼窩に向かって走っている.外転神経および内頚動脈(これは交感神経叢を伴っている)がこの静脈洞を貫いて走り,静脈洞の血液でそれらの周囲が洗われている.下方では海綿静脈洞は卵円孔静脈網によって翼突筋静脈叢とつながっている.そのほか内頚動脈静脈叢plexus venosus caroticus internusおよび錐体静脈洞ともつづいている.左右の海綿静脈洞は海綿間静脈洞Sinus intercavernosiによってたがいに結合している.この海綿間静脈洞は下垂体窩の前後の両壁,および底,ならびにトルコ鞍の後を1側から他側に走り,下垂体をほぼ完全につつみ,またトルコ鞍をとりまいている.

 下垂体の下にある結合は必ずしも常に存在しない.前方のつながりがいちばん目だつものである.海綿間静脈洞は下垂体と蝶形骨体の細い静脈を受け入れている.

7. 上錐体静脈洞Sinus petrosus superior(図685,8, 686)

 上錐体静脈洞は小脳天幕が錐体稜に付着する部分の中に包まれていて,海綿静脈洞の後端からS状静脈洞の上端へと後外側の方向をとって走っている.

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最終更新日13/02/03

 

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