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そこから迷走神経系統の諸神経(すなわち脳神経のIX, X, XI)の前をへて内頚静脈の上部に向い,頭蓋底のすぐ下で斜めにこの静脈に開口している.多くのばあい舌下神経管静脈網とつながっている.内頚静脈上球に開口することは比較的まれである.

9. 脳底静脈叢Plexus basialis(図686)

 これは斜台の上にある静脈叢であって,左右の海綿静脈洞と錐体静脈洞とのあいだをたがいにつらね,また脊柱管内の前方の静脈叢と合している.

10. 内頚動脈静脈叢Plexus venosus caroticus internus

 すでに幾度か述べた頚動脈管の中で内頚動脈に巻きついている静脈叢をいうのであって,海綿静脈洞と翼突筋静脈叢とをつないでいる.

 変異:硬膜静脈洞についてはJ. F. Knottの業績がある.その報告によれば,右の横静脈洞はたいてい左のものより太いのであるが,2例においては右のものが全く欠けていた.静脈洞交会は44例中27例では右側に,9例では左側に,また9例では中央にあった.4例では上矢状静脈洞が直接に右の横静脈洞へ移行していた.若干例では眼錐体静脈洞Sinus ophthalmo-petrosus(Hyrtl)がみられ,またしばしば鱗錐体静脈洞Sinus squamoso-petrosus(C. Krause)が認められた.26例では直静脈洞が左の横静脈洞に開口し,12例ではまんなかに,6例では右の横静脈洞に開口していた.蝶頭頂静脈洞は非常に変化に富むが,これが完全に欠けていることは決してなかった.海綿静脈洞は5例ではきわめて小さかつた.下蝶形骨静脈洞Sinus sphenoidalis inferiorは25例に存在していた.後海綿間静脈洞は26例において欠けていた.この両者が同時にあるのはわずか15例だけであった.非常にまれに(3例)上錐体静脈洞が欠如していた.眼静脈から上錐体静脈洞への吻合静脈は3例(左側)にみられた.脳底静脈叢は特にいうほどの変化を示さなかった.それに反して後頭静脈洞は2例で完全に欠如しており,9例では両側にあり,2例では縁静脈洞となって横静脈洞と頚静脈孔とをむすびつけていた(なお644頁を参照のこと).

f)眼静脈Venae ophthalmicae(図686, 688)

 眼窩の内容をなす諸器官の血液は2本のかなり太い静脈幹に集まるが,そのうちのいっそう太い方の幹は眼窩の上部を走り,その経過はだいたい眼動脈の分枝と一致している.一方,細い方の幹は眼窩の底の近くを走っている.これら2本の幹は眼窩の後端で合して1本の太い静脈となり,上眼窩裂を通って海綿静脈洞と結合している(図688,1).

a)上眼静脈Vena ophthalmica superior.この静脈は初め眼球の上内側にあり,それより後方では視神経の上を越えて外側に向い,上眼窩裂を通って海綿静脈洞に達する(図686).

 この静脈の幹は内眼角にある静脈網からできてくる.一方この静脈網は顔面の静脈とつながっており,なかでも顔面静脈の初まりである眼角静脈とつづいている.上眼静脈は次のものを受け入れる.鼻前頭静脈V. nasofrontalis,これは前頭動脈といっしょに前頭切痕のなかにある.前節骨静脈,後節骨静脈V. ethmoideae anterior et posterior,この2つはそれぞれ同名の穴を通って節骨を出てゆく.涙腺静脈V. lacrimalis,これは涙腺と眼窩の外側部にある諸筋からの血液を集める.前頭静脈,眼筋静脈Vv. frontales, Vv. musculares,眼窩の内側部と上部の筋から来る.渦静脈Vv. vorticosae=大脈絡膜静脈Vv. chorioideae majores,小脈絡膜静脈Vv. chorioideae minoresは眼球中膜から来る.毛様体静脈Vv. ciliares(感覚器参照)および網膜中心静脈Vena rentralis retinae,強膜上静脈Venae episclerales強膜の表面から来る.眼瞼静脈Venae palpebrales,結膜静脈Vv. conjunctivales.

b)下眼静脈Vena ophthalmica inferior.これは眼窩の底でその外側部にあり,下直筋と外側直筋とのあいだにある(図688, 2).

 この静脈は何本かの毛様体静脈,涙腺静脈,眼筋静脈を受け入れ,下眼窩裂を通じて深顔面静脈と1本の太いつながりをもっていることが多い.

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最終更新日13/02/03

 

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