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他のばあいは胸鎖乳突筋の前縁に沿って走り,この筋に被われて外側に向い,外側浅頚静脈と合する.あるいはまた外側浅頚静脈と吻合して,鎖骨下静脈に開口している.左右の前浅頚静脈の下部はしばしば横走する静脈弓,頚静脈弓Arcus venosus juguli(その一部が胸鎖乳突筋に被われる)によってたがいにつながっている.しばしば前頚部の静脈網から短い小幹だけが出ていて,これが頚の下部にある横走の静脈に開口していることがある.ついでこの横走する静脈は左右の外側浅頚静脈の下端部とつながっている.

d)肩甲上静脈V. suprascapularis.たいてい2本の静脈であって,同名動脈の両側を走り,集まって1本の小幹となり,外側浅頚静脈の下端部か鎖骨下静脈に開口している.

e)頚横静脈Vv. transversae colliは同名の動脈と並んで走り,しばしば肩甲上静脈と合して1本の幹を作り,外側浅頚静脈か鎖骨下静脈に開口している.

5. 鎖骨下静脈Vena subclavia(図600)

 鎖骨下静脈は上肢と肩からの血液を集め,なお胸壁の一部からも血液を集める.したがって鎖骨下動脈とだいたい同じ分布区域をもっている.

 第1肋骨の外縁から胸骨柄のところまで伸びていて,胸鎖関節の後で内頚静脈と合流して腕頭静脈をつくる.第1肋骨の上では,すでに前に述べたように前斜角筋によって鎖骨下動脈とへだてられている.非常にまれに動脈とともに前斜角筋の後を通る.内頚静脈に合するところには多くのばあい1対の弁がある.

6. 腋窩静脈Vena axillaris(図647)

 腋窩静脈は上肢のすべての血液を受けとるもので,著しく太くて,少数の弁をもっている.大胸筋の下縁から第1肋骨のところまで伸びており,鎖骨下静脈に続いている.

 腋窩動脈の内側を走っていて,前胸部の諸筋と烏口鎖骨胸筋膜に被われている.その初まりの近くで橈側皮静脈V. cephalicaを受け入れる.そのほか途中で胸腹壁静脈V. thoracoepigastrica,外側胸静脈V. thoracica lateralis,胸肩峰静脈V. thoracoacromialisが開口し,また乳頭静脈叢Plexus venosus mamillaeからの枝が流入する.さらに肋腋窩静脈Vv. costoaxillaresもこれに入るが,この静脈は第1~第6(7)肋間隙からやって来るもので,肋間静脈とつづいている.

7. 腕と手の静脈

 腕の静脈は浅層と深層に区別される.両層のものが多数の弁をもっていて,特にそれは深層のものに多い.なかでも細い静脈がいっそう太い静脈に開口するところには必ず弁がみられる.

 両層の静脈は若干の場所でたがいに結合していて,深層の仕事の重荷を浅層に移すようにできている.しかしまた浅層の静脈が途中で深層にはいっていくのもある.

A. 腕と手の深層の静脈

 深層の静脈はいつも手,前腕の動脈の両側た伴っており,多くの場所で横走する吻合によってたがいにつながるので,ときには動脈のまわりに狭い輪をなしてからみついた形をしている.深層の静脈には上腕静脈Vv. brachiales,橈骨静脈Vv. radiales,尺骨静脈Vv. ulnares,浅常静脈弓,深掌静脈弓Arcus venosus volaris superficialis et profundus,総掌側指静脈Vv. digitales volares communes,背側中手静脈,掌側中手静脈Vv. metacarpicae dorsales et volares,固有掌側指静脈Vv. digitales volares propriaeがある.これら深層の静脈は動脈の走行に沿っているので,特別に言うことがない.それぞれ1本の尺側と橈側の伴行静脈が区別されるのである.

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最終更新日13/02/03

 

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