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 左右の縦胸静脈はすでに腰部でそれぞれ上行腰静脈V. lumbalis ascendensをもって始まっているのが普通である.上行腰静脈は腰椎の肋骨突起の前を大腰筋に被われて多くのばあい軽くまがって上方にすすんでいる.またたいてい総腸骨静脈か,叉はその骨盤枝とつながり,上方に走りながら腰静脈と合する.しばしばその前方にある腎静脈ともいっしょになっている.またしばしば左右のものが直接に下大静脈につづいている.横隔膜のところではやや正中線に近づく.かくして肋骨突起のところから椎体に達し,大内臓神経とともに横隔膜の腰椎部の中間脚の裂け目をへて(まれに大動脈裂孔を通り,または交感神経幹とともに横隔膜の中間脚と外側脚のあいだを通って)胸腔にはいる.そこから縦胸静脈はその本当の名前となるのである.

 右縦胸静脈(奇静脈)は椎体前面の右半部の上を上方にすすみ,第4か第5胸椎のところでやs右後方に向い,かくして肺根に密接して右気管支のうしろに達する.ついでそれを越えて前方にまがり,心膜嚢の上で上大静脈に開口している.

 胸腔にはいるさいには胸管の右側に密接しており,胸管によって胸大動脈と食道とからへだてられている.そこでは分節動脈の前を走り胸膜の肋椎部で被われている.

 左縦胸静脈は左側にあって,胸腔の下部では右縦胸静脈と同じ走り方をしているが,ただ第10または第9胸椎から第7胸椎の高さまでは下行する胸大動脈のそばを上方にすすんでいる.そこで脊柱に密接して右にまがって大動脈,食道,胸管のうしろを通り,右縦胸静脈に達してこれに開口している.

 変異:左縦胸静脈はまた大動脈の前を右縦胸静脈に向うことがある (Hafferl, Anat. Anz., 57. Bd.,1924).

 胸腔を上方にすすむうちに,左右の縦胸静脈は多くの静脈をうけ入れ,またほかの静脈とつながっている.これに流入するものに分節静脈segmental Gefäße,なかでも肋間静脈Venae intercostales,さらに臓側枝,特に食道静脈Vv. oesophagicae,後気管支静脈Vv. bronchales dorsalesおよび縦隔後部から来るそのほかの枝である.

 神経は交感神経の縦隔枝から来る(Braeucker).

肋間静脈Venae intercostales(図690)

 この静脈は胸壁の深層と脊髄の胸部から血液を集めるもので,同名動脈のそばを通り,肋間隙の後部で1本の背枝Ramus dorsalisを受けとる.背枝は背中の皮膚と筋肉から血液を集め,また脊髄枝Ramus spinalisによって脊柱管からも血液を集める.椎体の側面では伴行する動脈の前上方にある.この静脈には弁がある.第12肋骨の静脈は肋下静脈V. subcostalisとよばれる.

 右肋間静脈Vv. intercostales dextraeは第1,または第1と第2のものを除いては右縦胸静脈に開口するのが普通である.下方の肋間静脈は別々に右縦胸静脈に開いているが,上方のものはしばしば1本の共通の幹に集まっている.またこの幹がときどき最上肋間静脈をもうけいれている.あるいは少なくとも縦の吻合によってこれとつながっている.

 左肋間静脈Vv. intercostales sinistraeはいろいろ違った関係を示している.最下部の4本ないし6本の静脈は左縦胸静脈にはいっている.中央のふつう2本ないし3本の静脈は椎体の前を通って,たいていは直接に,あるいは1本の共通の幹に合して右縦胸静脈に入る.

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最終更新日13/02/03

 

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