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第2ないし第5の胸分節に相当する上部の静脈は多くのばあい1本の幹に集まり,この幹は左腕頭静脈あるいは右縦胸静脈に合する.この幹を副左縦胸静脈V. thoracica longitudinalis sinistra accessoria とよぶ.この静脈が左腕頭静脈と右縦胸静脈とに同時につながっていることがある.さらにこの幹が左縦胸静脈をも受けとることがあり,かくして左側のすべての肋間静脈がたがいにつながって,そのうえで右縦胸静脈にも左腕頭静脈にも合している.

脊柱とその内容物の静脈

 脊柱の静脈は密な静脈叢をなして,脊柱の全長にわたって,その外面および脊柱管の内部に存在している.

 これはすべての分節静脈の背枝Rami dorsalesを通じて,それが体幹の頚部であろうが,胸部,腰部,仙骨部の何れであろうが同じ関係を示して,上大静脈と下大静脈とにつながっている.また大後頭孔のところでは脳に属する静脈腔および頭蓋外面の静脈と合している.

 脊柱の外面と脊柱管のなかにある静脈叢には前方のものと後方のものが分けられる.なおまた椎体,脊髄,脊髄の被膜の静脈がこれらの静脈叢に流れこんでいる.

1. 外椎骨静脈叢Plexus venosi vertebrales externi

a)前椎骨静脈叢Plexus venosi vertebrales ventrales.脊柱の前面にある小さい静脈と静脈叢であって,椎体および前方の靱帯の所々からの血液が集まる.そして一部は分節静脈,またはその代りになっている静脈に注ぎ,一部は近くにある他の静脈(縦胸静脈など)に開口し,また一部は椎体内の静脈(椎体静脈Vv. basivertebrales)とつながっている.

b)後椎骨静脈叢Plexus venosi vertebrales dorsales.これは椎弓,横突起, 棘突起の後面で,左右両側に静脈叢を作り,骨と背中の深層の諸筋および皮膚の血液を受け入れている.

 この静脈は椎弓間靱帯を貫いて脊柱管の静脈とつづいている.また椎間孔から出る脊髄枝Rami spinalesを受けとった後に,血液を各々の高さにある分節静脈に注いでいる.

2. 内椎骨静脈叢Plexus venosi vertebrales interni.

 これは強力な静脈叢であって,その基礎をなしているのは縦走する4本の静脈叢の束である.そのうちの2本は椎体の後面で脊柱の後部を縦走する靱帯の両側にあり,他の2本は脊柱管の後壁に接している(図691).

 縦走する静脈の束は多数の横の吻合によってたがいにつながる.また椎間孔をへて外方の静脈ともつづいている.この血液は頚部では椎骨静脈にそそぎ,胸部と腹部では肋間静脈と腰静脈に,骨盤では外側仙骨静脈にはいる.

 椎体静脈Vv. basivertebralesは椎体の内部にある幅の広い静脈で,板間静脈と同じく海綿質の管のなかをとおる(図692).

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最終更新日13/02/03

 

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