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 この静脈は水平の方向に放射状に走って,椎体後面の近くにある1つの弓状の骨内静脈に集まる.この骨内静脈は椎体の後面にある1つか2つの穴を通って脊柱管に達し,そこにある静脈に注ぐ. また椎体の前面にある静脈ともつながり,途中に弁をもっていないので,そのなかの血液は前後のいずれの方向にも自由に流れて外にでる.側方では椎弓からの静脈とつながっている.

3. 脊髄静脈Venae spinales

 この静脈は硬膜の作る袋のなかで柔膜に分布し,また脊髄の実質内に広がっている.柔膜のものは細くて長く脊髄の前後両面を走って,広がった網をなしている.この網は椎間静脈Vv. intervertebralesによって外方のものとつづいている.

 脊髄静脈には前外脊髄静脈後外脊髄静脈Vv. spinales externae ventrales et dorsalesおよび内脊髄静脈Vv. spinales internaeが区別される.

 この静脈は分節的な枝によってほかの脊柱の静脈と結合している.この分節的な枝はここにある動脈がやはりそうであるように血管の配列の本来の形を示しており,椎間孔を通って出てゆく神経に伴なっている.

 頭蓋の近くでは若干数の細い幹となって,椎骨静脈・小脳の静脈・頭蓋腔の下部の静脈洞とつながっている.

 脊髄硬膜Dura mater spinalisのもつ小さい静脈は近くにある脊髄と脊柱管の静脈とつづいている.

 外椎骨静脈叢と内椎骨静脈叢の血液はどの部分でも主に横の方向に流れるのである.そして血液は脊柱の外にある太い静脈,すなわち椎骨静脈,縦胸静脈,内腸骨静脈に入る.

c)下大静脈の領域

1. 下大静脈Vena cava caudalis, kaudale Hohlvene(図600, 690)

 これは下肢の血液ならびに骨盤,腹腔の内臓,骨盤腔と腹腔の壁,下部の脊髄およびその被膜からの血液を集めている.

 第4ないし第5腰椎の右側で,右総腸骨動脈の右後方で,左右の総腸骨静脈が合してこの静脈がはじまる.ついで腹大動脈の右側を上方に横隔膜に向かって上行するが,そのさい次第に大動脈から離れていく.大動脈は横隔膜の大動脈裂孔Hiatus aorticusをとおるが,下大静脈はまず肝臓の右の縦裂の後部に入り,ついで横隔膜の大静脈孔Foramen venae cavaeに向い,これを通って心膜嚢のなかに入り,まもなく右心房に開口する(図600).

 局所解剖:この強大な静脈の幹はかくして腹腔の後壁を右上方に向かって斜めに走っている.下方では大腰筋の内側縁,腰椎体の右側縁,交感神経幹の前方にあり,上方では横隔膜腰椎部の前方にある.下大静脈の後方には右腰動脈と右腎動脈がとおる.また前方には右精巣動脈が斜め下方に向かって走っている.おなじく前方には小腸間膜, 十二指腸下行部,膵臓,上腸間膜動脈および門脈があり,さらにもっと上方では肝臓がその前方にある.外側には右の尿管,右の腎臓と腎上体がある.

壁側枝

a)中仙骨静脈V. sacralis media.上方では1本であるが,下方ではしばしば重複しており,尾動脈に伴なっていて,左総腸骨静脈かあるいは直接に下大静脈に開口する.

 この静脈は前仙骨静脈叢の形成にあずかる.

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最終更新日13/02/03

 

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