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 この静脈網から2本の主幹である外側の小伏在静脈と内側の大伏在静脈が出る.

 小伏在静脈V. saphena parva(図698700).この静脈は足背静脈網の外側部から起り腓骨踝のうしろを通って次第にアキレス腱の後に向う.

 さらに上方では皮下において腓腹神経とともに腓腹筋の両腹のあいだの溝にはいり,筋膜を貫いて膝窩静脈に開口する.走っている途中で浅層の静脈を側方から受けとり,いろいろなところで筋膜を貫いて深層の静脈との結合を示している.浅層にある少数の細い静脈がそれぞれ独立して筋膜を貫いている.大腿の後面でところにより筋膜の上や下を走ったりしている1本の静脈を大腿膝窩静脈V. femoropopliteaという(図700).

 大伏在静脈V. saphena magna.これは足背静脈網の内側部からきて脛骨踝の前を上方にすすむ(図698, 699).

 下腿の内側では伏在神経のそばにあり,膝のところで大腿旨の内側顆のやや後方に向い,ついで大腿の前内側面を上行して大腿筋膜の卵円窩にいたり(図697),そこを通り抜けて大腿静脈の上端に合する.

 下腿および大腿においては筋膜を貫いて深層の静脈と数多くのつながりをもっており,また特に大腿においては浅層の静脈を多数うけとっている.副伏在静脈V. saphena accessoriaはかなり太い静脈で,大腿の前内側面の皮静脈を集めて卵円窩のなかで大伏在静脈に合する.

 大伏在静脈は腹董の静脈,および陰部の前部の浅層の静脈も若干うけとっている.これらの静脈は浅腹壁静脈V. epigastrica superficialis,浅腸骨回旋静脈V. circumflexa ilium superficialis,および外陰部静脈Venae pudendales externaeであって,これらの分布区域はそれぞれ同名動脈のそれと一致している.

 下肢の浅層の静脈にも深層の静脈にも多数の弁があり,深層のものにその数がいっそう多いのである.

 足の静脈は手の静脈と同じようになっている.足の指には背側[]指静脈Vv. digitales pedis dorsalesが走る.これはそれぞれ2本が集まって背側中足静脈Vv. metatarseae dorsales pedisとなる.後者が足背静脈弓Arcus venosus dorsalis pedisに開口するが,この静脈弓は足背静脈網とつながり,この静脈網から大と小の伏在静脈が起るのである.

 足の指の底側では底側指静脈Vv. digitales plantaresがあり,それぞれその2本が合流して底側中足静脈Vv. metatarseae plantaresとなる.これが足底静脈弓Arcus venosus plantarisに開き,また小頭間静脈Vv. intercapitularesによって足背の静脈とつながっている.足底静脈網Rete venosum plantareは密な網をなして,足底の皮下組織の中にある.

IV.リンパ管系Systema lymphaceum, Lymphagefäßsystem

A.概説

 リンパ管系は脈管系の全体にとっては極めて重要な構成要素であり,その原始的な形は血管に先だって現われる.

 その二次的な形として出来上がったものは脈管系のずっと進んだ分化を示している.

 リンパ管系は次のものからなりたっている.

1. リンパ管Vasa lymphacea,すなわちリンパ管とリンパ腔Lymphagefäße und Lymphräume.これはいろいろな形と大きさ,ならびに構造をもっており,リンパ管と乳康管Lymph-und Chylusgefäßeに分けることができる.

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最終更新日10/08/28

 

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