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 個々のリンパ小節に周辺層中心層を区別することができる.周辺部はリンパ様細胞,つまり小さくてだいたい円い細胞で,わずかな細胞体と強く染まる正円形の核とをもつものがたがいに密集してこれを成している.

 中心層では細胞はそれほど密に集まっていなくて,細胞体は原形質に富み,また多くのものでは核が薄く染まっていてその形もかなり大きい.したがってリンパ小節の中心部は明るい色を呈していて周辺部から区別できる.また中心部ではかなりの数の細胞分裂像が認められる.そのためこの部分は胚中心Keimzentrumと呼ばれている.おそらく胚中心はリンパ小節の形態要素として恒常的な一部をなすのでなく,絶えず変化している構造物であろう.

 この考えはBaumとHilleの研究によりいろいろの動物(ウシ,ブタ,ウマ,イヌ)で確かめられた.若い動物および胎児では胚中心はみられないのである.“年令がすすむとともに初めて胚中心が現われ,次第に明らかとなり数も増加し形も大きくなる.しかしある年令を境として胚中心はふたたび不明りようとなり,数も減少して大きさも小さくなり,比較的高年またははなはだ高年に達すると,全部というわけではないがそのほとんど大部分がふたたび消失してしまう”といっている(Anat. Anz., 32. Bd.,1908). Hellmann(Beitr. path. Anat., 68. Bd., Verh. anat. Ges.,1939)は胚中心を侵入した刺激物に対する“Reaktionszentren(反応中心)”としてみている.しかしHoepkeは(Z. Laryng., Bd. 22 u. Beitr. pathol. Anat.,1931, Verh. anat. Ges.,1938)これがそのときどきの要求によって胚中心となったり反応中心となったりすることができるのであって,しかもずっとひきつづいて胚中心であることはできるが,いつまでも反応中心であることはできないということを証明した.

 集合形のリンパ小節,つまり扁桃,腸の集合リンパ小節については内臓のところで述べる.

2. リンパ節Lymphonodi, Lymphknoten, またはリンパ腺Lymphdrüsen

 リンパ節はリンパ小節と同じ組織からなりたっているが,決してリンパ小節の集合体ではなくて,その存在する場所により,また輸入および輸出リンパ管とよく発達した密接なつながりをもつことによりリンパ小節と区別することができる.リンパ管との関係がリンパ節の構造に非常に大きい影響をあたえるので,リンパ節は第3の特色としてリンパ様組織からなるほかの構造物とは特にその構造において相違するのである.

 リンパ節はかたく,円みをおびたり,あるいは長めの,多くは平たい形をした器官であって,リンパ管や乳ビ管の途中に介在している.したがってリンパ管や乳ビ管の内容は太いリンパ管の幹を経て心臓にいたる途中で必ずリンパ節を通り抜けなければならない.

 リンパ節は特に頚部,胸部,腹部(こ,ではとりわけ小腸間膜)の大きな血管の走行に沿い,また大動脈,下大静脈および腸骨動静脈に沿って列をなして配置されている(図717).そのほか数も少なく大きさも小さいが頭蓋の外部や肋間隙にみられる.またリンパ節の目立った集団が腋窩とこれに相当する鼡径部に存在する.なお孤立したものが肘窩,尺側上腕二頭筋溝,膝窩にある.

 リンパ節の大きさは著しく異なっている.麻の実,ないしそれ以下の大きさしかないものも沢山あるが,またその直径が扁桃や,それ以上にも達するものがある.全体としてその最長径はほぼ2mmから3Qmmのあいだを上下する.いろいろな病的の影響でリンパ節は容易に,しかも急に大きくなる.

 リンパ節にはいるリンパ管は輸入管Vasa afferentiaと呼ばれ.そこから出てゆくリンパ管は輸出管Vasa efferentiaと呼ばれる.はいって来るリンパ管はリンパ節の近くで多くのばあい何本かの枝に分れてリンパ節にはいる.そのさい輸入管の数は輸出管よりも多いものである.輸出管はリンパ節のなか,およびそれから外に出たところで細い枝が集まってできるのであってミ輸入管よりは太いものである(図708, 709).

 リンパ節はその表面を平滑筋細胞を含む丈夫な結合組織の膜,すなわち被膜Capsulaによって包まれている.

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最終更新日10/08/28

 

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