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それゆえリンパ漿のなかには水分,塩類,アルブミン質,レシチン,脂肪,糖,尿素,抽出性の物質が存在し,また気体としてはほとんど炭酸ガスだけが含まれる.

 乳ビChylus(Milchsaft),すなわち腸のリンパDarmlympheの普通のリンパとの本質的なちがいは脂肪消化のときに脂肪を多く含有するということだけである.すでに述べたように脂肪はごく細かい粒の状態で存在している.乳ビは小腸や小腸間膜の乳ビ管,ならびに腸リンパ本幹や胸管にあるのみでなく,小腸間膜内のリンパ節にも存在する.消化のとき以外には上に述べたリンパ管系はすべて普通のリンパを通じている.

 リンパ管系についてのすべての記載をまとめてその主な役目を次のように総括することができる.

1. リンパ管は体の組織を養うために毛細血管から出てきた組織液を導き出すものである.

 リンパの求心性の流れは静脈血の流れと同じ力によって保持され,また促進される.リンパ節ではリンパの流れが遅くなるが,その被膜と梁柱にある平滑筋はある程度その流れを促進する特別なものとなっている.

2. 毛細リンパ管は毛細血管とともに組織を養う役目をなしていて,そこに栄養物を送りとどけ老廃物を導き出す.

3. リンパ節はリンパに,またそれを通して血液に若いリンパ細胞を絶えず供給している.

4. リンパ節はリンパの流れを濾過して清浄にし,それは同時に血流をもきれいにすることになる.

5. 乳ビはリンパに,またそれを介して血液に腸の絨毛の中心乳ビ腔からはいってきた物質を運び,それには細かく分れた脂肪粒もある.

6. 胃と腸の粘膜の毛細リンパ管,および毛細血管がどのようなぐあいに乳ビの吸収にあずかっているかはまだ充分に分かっていない.一般の考えでは血管が拡散可能の物質,たとえば水,塩類,糖,グリセリン,鹸化物,ペプトンを吸収し,またある種の毒物も血管によって受け入れられる.それに対して乳ビ管は強いコロイド性をもつ物質(蛋白)と,不溶解性であって細かい粒子に分れる物質,たとえば脂肪の乳濁液のようなものを受けとるというのである.

7. リンパ節が白血球を生産するとともに赤血球の生産にもあずかっているかどうかは疑わしい.またそこで血小板ができるかどうかもはっきりしない.

[図713] リンパ管系の概観

 H 心臓;A 大動脈;C毛細管の領域;V 大静脈;L リンパ管の幹;Ch乳ビ管の幹;L'2つの部分が合してできた幹;* リンパ管の幹が静脈系に開くところ. I リンパ管の毛細管領域;II乳ビ管の毛細管領域;III, III リンパ節;1, 2, 3, 3つの小腸絨毛洞.

B.各論

 その位置と走行によって浅層のリンパ管深層のリンパ管Vasa lymphacea superficialia et profundaに分けられる.

 浅層のリンパ管はいっそう豊富であって,全身の表面の直ぐ下,あるいは個々の器官の表面のすぐ下にある.深層のリンパ管は諸器官の内部にある.

 体の表面のリンパ管は皮膚のなかではじまって皮下脂肪組織のなかを走っており,また個々の器官では浅層のリンパ管はその外方の層の中にある.

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最終更新日10/08/28

 

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