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 深層のリンパ管は体の筋肉の間か,あるいは諸器官の内部にあって,浅層のものとつながっており,多くは血管の通り道に沿ってすすんで,そこここのリンパ節に達している.

 大多数のリンパ管はその途中で1つまたはそれ以上の数のリンパ節を通過するようにできている(670頁参照).リンパ節は前に述べたように(676頁)定まった場所に孤立していたり群をなして集まっていたりする.リンパ節の数と大きさは相当大きく変動する.なおまた細いリンパ管が太いリンパ幹に直接にひらいていたりリンパ節の輸出管が直接に静脈に開口しているのが観察された(Baum).ある一定の器官,あるいは体の一定の場所にあるリンパ管は定まったリンパ節,すなわち領域リンパ節regionäre Lymphknotenにいたることは経験の示すところである.この領域リンパ節にその器官が従属tributärしている.しかしこの場合に1個のリンパ節あるいは1集団のリンパ節が,1個の器官だけからリンパを受けていることは決してないし,また1個の器官が1つのリンパ節集団だけに従属していることもまれであることを知っておかねばならない.

 したがって従属している器官によってリンパ節の集団を分類することはうまくいかない.むしろその記載は主に局所解剖学的観点に従つたほうがよい.

 Bartels, P, , Das Lymphgefäßsystem, Jena ,1909.

I. リンパ管系の本幹

 すべてのリンパ管は最後にはたいてい2本の本幹に集まる.そのうちの1本は胸管Ductus thoracicus, Milchbrustgangといって頚部の左側にあり,もう1本は右リンパ本幹Truncus lymphaceus dexter, rechter Lymphstammといい,多くは右側において静脈系に開口する.胸管は下半身からのすべてのリンパ管,すべての乳ビ管,および上半身の左半分のリンパ管を集めており,一方,右リンパ本幹には頭部と頚部の右半および胸部の右半分と右上肢からのリンパ管がはいるのである.

1. 胸管Ductus thoracicus, Milchbrustgang(図690, 701, 715)

 胸管は左右の下肢,腹部内臓(肝臓の上面の一部を除く)と腹壁,胸壁の左側,左肺,心臓の左の部分,左上肢,頭部と頚部の左側のリンパ管を受けるところの共同の幹となっている.成人では38~45cmの長さで,ふつう第2腰椎から頚の下端(第6頚椎の高さ)まで伸びている.

 日本人では35.9cmの長さしかない(Adachi).多くの例では第3腰椎の前ではじまっているが,第1腰椎ないし第12胸椎のところでやっと始まっている場合もある.日本人では下方で始まるものが大多数である.

 胸管は主に3本の根,すなわち右と左の腰リンパ本幹Truncus lumbalis dexter, sinister,不対の腸リンパ本幹Truncus intestinalisがいっしょになってできあがる.これらの3本が1箇所で集まることもあるし,たがいに順々に合することもある.

 共通の幹が乳ビ槽Cisterna chyli(図690, 717)という広くなったところから始まる.乳ビ槽はいろいろな大きさであって,ときとしてその根の1本に存在することもある.胸管にはその全長にわたってが存在し,そのところで管がふくらみを呈している.Adachiによるとたいてい10~19個(最少4個, 最大25個)の弁が存在する.上部と下部にいっそう多くて,中央部にはわずかしかない.

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最終更新日10/08/28

 

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