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 そのほかのやはり深層のリンパ管で臀部の筋と下肢の内転筋から来るものは臀動静脈,閉鎖動静脈に伴なって骨盤に入り,内腸骨動静脈と総腸骨動静脈の周りにあるリンパ節に達する.

c)浅鼡径リンパ節Lymphonodi subinguinales superficiales(図717720)は通常8ないし10個あり,斜めにならぶ上方の層(これが以前にはLymphonodi inguinalesとよばれた)と縦の方向に集まる下方の層とに分けられる.

 前者は鼡径靱帯に沿って並んでいて,腹壁と外陰部のリンパ管をうけとり(図720),また大腿の外側の一部から浅層のリンパ管を受けている.鼡径部でもっと下方にあって縦の集まりをしているリンパ節群は卵円窩のなかとその周囲にあり,大伏在静脈の上部を取りまいて,下肢浅層のリンパ管の大部分を受けとっている(図717719).

 鼡径部のリンパ節はSappeyとBruhnsによれば5群に分けられる.すなわち鼡径溝のなかにある上方群,伏在静脈のそばにある下方群,伏在静脈の開口部の内側にある内側群,大腿動脈の外側にある外側群,およびこれら4つの群の中央にある1のリンパ節である.全部で5~15個のリンパ節が存在する(これについての詳細および批判はBartels, S.190を参照のこと).

d)下肢深層のリンパ節は3つの部分に分れている.

1. 前脛骨リンパ節Lymphonodus tibialis anterior.いちばん下方にあるもので,ふつう1個であるが,2つあることもあり,1つもないこともある.下腿骨間膜の前面で,その上方1/3のところにある.

2. 膝窩リンパ節Lymphonodi poplitei.たいていは小さいもので,4個ないし5個あって,膝窩動静脈をとりまき,厚い脂肪層に包まれている.これは小伏在静脈に伴なってくる浅層のリンパ管と下肢深層からの大部分のリンパ管を受けとる.その輸出管は大腿動脈に伴なって鼡径部にいたる.

3. 深鼡径リンパ節Lymphonodi subinguinales profundi.これはたいてい4個あって,内大腿輪の近くで大腿動静脈のすぐそばにある.その中の1個はふつう大腿静脈の内側にあって,クロッケのリンパ腺Drüse von Cloquetまたはローゼンミューラーのリンパ腺Drüse von Rosenmüllerとよばれ,大腿輪を閉じることにあずかっている(図591, 647, 717).大腿の前がわを上行する深層のリンパ管と浅鼡径リンパ節の輸出管とがこの深鼡径リンパ節にはいる.

2. 腹壁と陰部のリンパ管

a)腹壁浅層のリンパ管(図718)は放射状に浅鼡径リンパ節に集まるが,そのさい概して腸骨回旋動静脈,浅腹壁動静脈,外陰部動静脈の通り道に沿っている.そのほか側方から臀部のリンパ管および背中の下部のリンパ管が来ている.

b)陰茎のリンパ管(図717, 718)には浅層と深層の2群がある.

1. 浅層のリンパ管.これはたいてい3本の小幹からなりそのうちの2本は側方を,1本は陰茎の背側を走る.これらは包皮のところで網をなしてはじまり,この網は亀頭のリンパ管を受けている.3本の小幹は後方にすすんで,陰茎背でいっしょになり,ふたたび分れて左右に向い,鼡径靱帯のところにある鼡径リンパ節にはいる.

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最終更新日10/08/28

 

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