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 Kumitaによると皮質と髄質に毛細リンパ管網があって,個々の細胞を取り囲み,なお細胞体の中にまで枝を入れている.毛細リンパ管網から集まるリンパ管は一部は被膜のリンパ管の幹に移ってゆき,一部は中心静脈を取り囲むリンパ管網に開いている;

n)腰リンパ叢はよく発達していて腰椎の前面にあり,大動脈ないし下大静脈に密接している.この叢は20個から30個のたいていは大きな腰リンパ節Lymphonodi lumbalesをもっている.これは下方のリンパ叢とつながり,そのほかにまだ側腹壁と背中からのリンパ管を受けとっている.

 腰リンパ節からの輸出管は上方にすすむにつれて太さは増すが数は減じ,最後に各側1本あるいは2本の幹に合し,かくして腰リンパ本幹Truncus lumbalis, Lendenstammを作る.これは各側における胸管の主な根の1つとなっている.

o)内臓リンパ叢は多数のリンパ管の幹からなる.これらは腸管,胃,脾臓,膵臓,一部の肝臓からきていて,腹腔動脈の幹の周囲で10~15個の腹腔リンパ節Lymphonodi coeliaciとつながっている.このリンパ叢から1本の短い幹(ときどきそれより数の多いことがある)が出ていて,これを腸リンパ本幹Truncus intestinalis, Eingeweidestammといい,腹腔動脈とともに上方にすすみ,胸管の中央の根となっている.

p)腸の乳ビ管は粘膜のなかで始まり,粘膜下組織のなかに網の形をなしてつづいている(図704).乳ビ管は2組のリンパ管とつながるが,この2組がそれぞれ異なった方向と位置をもっているのであって,そのうち粘膜下組織のなかにある組は腸管壁に沿って輪状に走り,表層にある漿膜下の組は主として腸管の縦軸の方向に走っている.そのほかになお筋層間のリンパ叢もある.粘膜下のリンパ管は本来の乳ビ管Chorlusgefäßeであって,時によって消化作用の結果である栄養液の大部分を導く.一方,それより外方にあるリンパ叢は腸管壁じしんのリンパ管である.しかしこれらの異なった位置にあるものがたがいにつながり合っている(Teichmann).腸壁のいろいろな部分からのリンパ管が小腸間膜の付着部に達すると,これらは小腸間膜の両葉の間にはいり,比較的まっすぐにその根に向かって走ってゆく.

 腸間膜のなかでリンパ管は多数の小腸間膜リンパ節Lymphonodi mesostenialesとつながっている.このリンパ節はたがいに何列かをなして並び,全体でおよそ150~180個も存在する.健康なときはエンドウ大から扁桃くらいまでの大きさであり,腸管の疾患にさいしてはときに非常に大きくなる.小腸間膜根のところではリンパ節がもつつも密に集まっていて,完全に団塊を作っている.しかし末梢ではたがいにバラバラに離れている.大腸につながる腹膜のひだの中にも若干の結腸間膜リンパ節Lymphonodi mesocoliciがある.

 リンパ管と乳ビ管はたいていいくつかのリンパ節をつぎつぎと通過して行き,次第に合して太い幹になり,この幹が小腸間膜根で腹腔リンパ節Lymphonodi coeliaciとつながるのである.下行結腸のリンパ管はしばしば左の腰リンパ叢といっしょになる.

q)胃のリンパ管(図722, 723)には粘膜,粘膜下組織,筋層および漿膜のリンパ管がある.たいてい血管の走行に伴なっていて,小臀に沿って並ぶ上胃リンパ節Lymphonodi gastrici cranialesと大弯にある下胃リンパ節Lymphonodi gastrici caudalesに終わっている.これらのリンパ節は膵脾リンパ節Lymphonodi pancreaticolienalesおよび腹腔リンパ節Lymphonodi coeliaciとつながっている.

r)脾臓のリンパ管(図723, 724)は一部は浅層に,一部は深層にある.これらはすべて脾門にすすみ,そこから血管とともに出て,これと並んで膵脾リンパ節および腹腔リンパ節に達する.

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最終更新日10/08/28

 

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