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 肝臓の横隔面のリンパ管はいろいろな方面にすすんでいて,そのため幾つかの群を作っている.中央部からは5本ないし6本の小幹が肝鎌状間膜に走り,集まって1本のリンパ管となって,横隔膜の胸肋骨起始の筋束のあいだを通って胸管にはいる.縦隔の前方部で,このリンパ管はそこにある前縦隔リンパ節Lymphonodi mediastinales ventralesに入る(図725).第2群のリンパ管は右側に向かって右三角間膜にいたり1本または2本の小幹に集まる.この小幹は横隔膜を貫いて,その上面を内側にすすんで胸管にいたる.肝臓左葉の横隔面から来る第3群は左三角間膜において合して少数の小幹となり,横隔膜を貫いて縦隔の前方部に達する.

[図724] ブタの脾臓の浅層のリンパ管 (Sappey)

肝臓の前縁のすぐ近くにあるリンパ管が第4群というべきものである.これはたいてい前縁を下方に廻って肝臓の内臓面のリンパ管に向かっている.肝臓の内臓面のリンパ管は密な網を作り,その小幹は主として肝門へ走り,そこから血管に伴なって腹腔リンパ節に達する.そのほかのリンパ管は,少数の小さなリンパ節を通ってから直接に胸管にはいる.左半分から少数のリンパ管が小網を通って胃の小臀に達し,そこにあるリンパ管といっしょになる.

 さらに肝臓の浅層と深層のリンパ管は,この器官のいたるところでたがいにつながりあっている.

 胆嚢のリンパ管は膵脾リンパ節にいたる.

4. 胸腔のリンパ管とリンパ節

 胸腔のリンパ管は胸管を除くと2つの大きな群からなりたっている.そのうちの1つは胸壁の内面にあり,いま1つは胸腔内臓に属している.

 胸腔にはさらに3つの大きなリンパ嚢とそれに相当するリンパ腔がある.つまり左右の胸膜嚢,および心膜嚢である.

A. 胸壁内面のリンパ管

 胸壁内面のリンパ管は2部に分けることができる.すなわち前縦隔部肋間隙のものとである.後者は後縦隔部のリンパ管とつながっている.

a)前縦隔部のリンパ管はすでに腹腔と前腹筋群において始まり,横隔膜の胸肋骨起始部のあいだを通りぬけて胸骨のうしろを上方に走り,内胸動静脈の近くにある胸骨リンパ節Lymphonodi sternalesおよび前縦隔リンパ節Lymphonodi mediastinales ventrales(図725)とつながり,左は胸管に,右は右リンパ本幹に開口している.

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最終更新日10/08/28

 

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