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しかしときとして顎部の下端にある3本の太い静脈(鎖骨下静脈,内頚静脈,外側浅頚静脈)のうちの1本に直接に開いている.

 咽頭のリンパ管は3つの場所でその壁から出てゆく.すなわち1. 前下方へ出るものは梨状陥凹のなかから,2.後方へ出るものは咽頭の後壁から,3. 側方へは口蓋扁桃のところからそれぞれ出ている.

 前下方の流出路は咽頭の喉頭部のリンパを導く.その幹は喉頭の上部のリンパ管とともに舌骨甲状膜を貫いて深頚リンパ節に達する.

 後方の流出路は咽頭の鼻部と口部の壁から来て,その幹は2つの場所で現われる.それはa)後正中線と,b)後壁と側壁の移行部とである.両者とも咽頭後リンパ節と深頚リンパ節に向かってすすむ.

 側方の流出路となっている幹は口蓋扁桃のところで外に出て,顎二腹筋の後腹と舌下神経に被われて内頚静脈の前を外側にすすみ深頚リンパ節にいたる.

 口蓋扁桃からの2~3本のリンパ管はこの扁桃の外側面から出てまず咽頭壁を貫き,ついで茎突舌骨筋と内頚静脈のあいだで,常に内頚静脈の上で顎二晦筋の,後腹に接して存在する1個の大きな上深頚リンパ節にいたる.

 喉頭のリンパ管は声帯靱帯の上では極めてわずかしかない.声帯は上方と下方のリンパの分布区域の境となっている.上方と下方の両部は喉頭の後壁のリンパ管によってつながっている.

 上方の区域から3~6本のリンパ管がでて,上喉頭動脈のすぐ前で舌骨甲状膜を貫いて,上深頚リンパ節に達する.

 下方の区域のリンパ管は前がわにある少数の小幹をなし,輪状甲状靱帯を貫いて喉頭前リンパ節Lymphonodi praelaryngiciにすすむ.このリンパ節は喉頭の下部の前で輪状甲状靱帯か輪状甲状筋の上,あるいは輪状軟骨そのものの上にある.そこからリンパの流れは深頚リンパ節に行く.喉頭の下部かち後方に出る若干の小幹は輪状気管靱帯を通りぬけて気管リンパ節Lymphonodi trachealesにいたる.

 甲状腺のリンパ管は細かい網を作って個々の小胞をとりまいている,これから出てゆく幹の走行は血管の路に相当している.従って上方と下方への路がある.

上方の流出路は喉頭前リンパ節と上深頚リンパ節にすすみ,下方の流出路は気管リンパ節と下深頚リンパ節にいたる.

6. 胸部外面と上肢のリンパ管とリンパ節

 上肢のリンパ管は浅層と深層に分がれている.

 この2組のリンパ管と胸壁の外面の上部からのリンパ管は腋窩リンパ節におもむくが,後者にはなお背中の浅層のリンパ管も一部きている.

a)腋窩リンパ節Lymphonodi axillares, Achselknoten(8~43個)は筋膜下で腋窩の脂肪組織の中にあり,たいてい腋窩の太い血管の周囲にある(図718, 730).

 その一部,すなわち前腋窩リンパ節ventraleAchselknotenは外側胸動脈に沿って胸筋の下にあり,またその他の部分である後腋窩リンパ節dorsale Achselknotenは腋窩の後部をしめている.また下腋窩リンパ節kaudale Achselknotenという比較的少数のリンパ節の集りが腋窩の下部にある.前腋窩リンパ節は胸部のリンパ管を受け入れ,後腋窩リンパ節は背中と肩の部分のリンパ管を受けとり,また前後の間のところにあるものは上肢のリンパ管を受け入れている.腋窩にあるすべてのリンパ節はリンパ管によってたがいにつながって,腋窩リンパ叢Plexus lymphaceus axillarisを作っている.またこのリンパ叢は肩甲下動脈に伴なうところの肩甲下リンパ節Lymphonodi subscapulares(これは常在するとは限らない)とつながっている.

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最終更新日10/08/28

 

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