Rauber Kopsch Band2. 006   

腺腔にはそのときに腺細胞からでてきた液体があって分泌顆粒はそのなかに溶けるのである(図63).

 ウトレヒト(オランダ)のG. C. Hirsch(Handb. Phys.,18. Bd.,1932)はマウスの生きている膵臓細胞を20時間のあいだ生理的な条件のもとで分泌顆粒の形成について観察した.そしてこの粒子が最初にみえてきてから熟するまでに10~13時間かかることを知った.

 粒子は初め腺細胞の基底部にあるミトコンドリアの表面に着いて,0.1µの大きさの小粒としてあらわれる.そこに10~17分間とどまっている間にいくらか大きくなる.ついでその最初の個所を去って,およそ1~1.5時間かかつて核のところを迂回して(速力は1µをゆくのに7~13分である),内網装置のところに移る.この移動のあいだにおよそ6倍の大きさになり,明るくなり,その他の物理化学的な性質も変るのである.ついで内網装置のところに滞在するうちに分泌顎粒は小さくなり密になる.それから細包の尖端部(腺腔に面する部分)に移動していって,そこで貯えられる(図5).

 分泌顆粒に伴っている液体Flüssigkeitはおそらく原形質からでてくるのであろう.この液の含む無機成分の量はたぶん内網装置のはたらきによって影響され統制されるものとおもわれる.著者(Kopsch)じしんのたびたびの観察がそのことを示すようであ

る.Saguchi(Saguchi(佐口栄),もと金沢大学教授.) (1922)によるとこの液体は内網装置からでるという.

[図5]分泌顆粒の形成 G. C. Hirschの研究による.

II. 脈管腺Glandulae vasculares(Organa cytogenea), Gefäßdrüsen

 リンパ様組織lymphoides(aytogenes)Gewebeというものはまず第1にリンパ球をつくる器官を成しているのであって,そこでできたリンパ球は…部は能動的に他の組織のなかにはいってゆき,あるいは遊走して自由面にでるのであるが,一部はリンパ流や血流によっていっそう遠くへ運ばれてゆく.

 粘膜の範囲では孤立リンパ小節Lymphonoduli solitariiと集合リンパ小節Lymphonoduli aggregatiとがある.後者に属してその境がはっきりしているものが扁桃Tonsillenであり,回腸のいわゆるパイエル板Peyersche Plattenもそれである.粘膜の範囲以外ではリンパ腺Lymphdrüsenすなわちリンパ節Lymphonodi, Lymphknoten,ならびに血リンパ節Haemolymphonodi, Blutlymphdrüsenや脾臓や胸腺がこの脈管腺の部類に属する.また赤色骨髄rotes Knochenmarkもこれに数えることができる.

 扁桃・胸腺・腸のリンパ小節はリンパ上皮性器官lymphoepitheliale Organeと総称されている.この 器官はリンパ様組織だけからできているのでなくて,そのほかに上皮から由来する細胞も持つている.

2.筋層Tunica muscularis, Muskelhaut

 筋層はすべての内臓にあるとは限らないがしかしその分布は広いものである.これは多くのばあい平滑筋線維より成るが,若干の場所では横紋筋である(咽頭・食道の一部・喉頭・陰部).また内臓の多くの部分では筋層のなかで2層が区別され,第3層が加わっている所もある.2層をなしているときはその各々がたがいに直角をなす方向に走っていて,ふつうには外方の縦走線維層Längsfaserschichtと, 内方の輪走線維層Ringfaserschichtとがある(図2, 90).血管,リンパ管,神経線維と神経細胞もこの層にたくさんある.結合組織がその外側を被って,筋層の内部にもはいっている.

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最終更新日13/02/03

 

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