Rauber Kopsch Band2. 013   

 口を開いた状態では前庭を後方から境するものとして上述の翼突下顎ヒダPlica pterygomandlbularisが上下の方向に張っている.また上下の口唇を歯列から引き離すと正中線のところに既述の上および下唇小帯がみられる(図80).

 顎骨の上にある粘膜はそれが骨の縁を被っている範囲で骨膜と密に融合していて,骨膜といっしょに固い組織をなしている.この固い組織は歯肉Gingiva, Zahnfleischとよばれ,その一部は歯頚を被うものとなっている.

 狭義の口腔Cavum orisは前方は上下顎の歯槽突起と歯列により,上方は硬および軟口蓋Palatum durum et molle, harter und weicher Gaumenにより,下方は舌および舌と下顎骨の内面とのあいだに張る口腔粘膜の部によって境されている.最後に述べた口腔粘膜の部分はその下敷きとして各側にまず長くのびた舌下腺Glandula sublingualisがあり,ついでオトガイ舌骨筋と顎舌骨筋とがある.舌下腺の上方で粘膜は舌の根もとを囲むような形のひだをなして突出している.これが舌下ヒダPlica sublingualisといい,その前端のところが左右それぞれ1つの乳頭状の高まりをもって終わっている.ここを舌下唾液乳頭Papilla salivaria sublingualisといい,ここに開口する最も主なものは顎下腺Glandula submandibularisである(唾液腺の項を参照のこと).前方かつ正中に当たって口腔の底から舌の下面に達する上下の方向にのびた粘膜のひだが1つあって,舌小帯Frenulum linguae, Zungenbdndchenとよばれる(図78).

3. 歯Dentes, Zähne(図12, 1459, 7880)

 前庭を内方から閉じて,前庭と狭義の口腔との境界をなしているのが,上下の歯列弓 Arcus dentalismaxillaris et mandibularisである.歯列弓は顎の歯槽突起,歯肉および歯からできている.

歯の一般的性状

 歯は硬いもので,単一の根あるいは分岐した根をもって顎骨の歯槽のなかにはまりこんでいる.相ついで生えてくるところのふた組の歯が区別される.すなわち乳歯Dentes decidui, Milch-oder Wechselzähneと永久歯Dentes permanentes, bleibende Zähne, Ersatzzähneとである.前者は上下顎にそれぞれ10本,合せて20本あり,後者は上下顎にそれぞれ16本,合せて32本ある.すなわち全体として両顎に52本の歯が生ずる.

 いずれの歯も3つの部分からできている.歯肉の外に突きでている歯冠Corona dentis, Zahnkrone,歯肉に包まれている歯頚Collum dentis, Zahnhals,歯槽のなかにはまっている歯根Radix dentis, Zahnwurzelとその枝である歯根枝Rami radicis dentis,その先端は歯根尖Apex radicis dentis, Wurzelspztzeないし歯根枝尖Apex rami radicisとして終る.

 いずれの歯もその内部に歯髄腔Cavum dentis, Zahnhöhle, Markhöhleという1つの腔所をもっており,これを充たしている歯髄Pulpa dentis, Zahnmarkは脈管と神経に富む軟い結合組織である.歯髄腔のつづきが歯根を貫いているところは歯根管Canalis radicisdentis, Wurzelkanalないし歯根枝管Canalis rami radicisとよばれる.この管が歯根の先端で開くところは歯根尖孔Foramen apicis dentisないし歯根枝尖孔Foramen apicis rami radicisである.歯髄腔の形は全体的にみるとおよそその歯の形に似ている(図32).

 いずれの歯にも,そしていずれの歯冠にもつぎの5面が区別される.咀嚼面Facles masticatoria, Schneidekante oder Kaufläche,唇面あるいは頬面Facles labialis, buccalis, Lippen-oder Wangenfläche,舌面あるいは口蓋面Facles lingualjs, palatma, Zungenoder Gaumenfläche,ならびに2つの接触面Facles contactus, Berührungsflächenである.2つの接触面は切歯と犬歯では内側面外側面Facles medialis, lateralisであり,小臼歯と大臼歯では前面後面Facles anterior, posteriorである.(内側面と前面を近心面,外側面と後面を遠心面という.(小川鼎三))

 歯を構成する硬い物質は歯髄腔をとりかこむゾウゲ質Substantia eburnea, Dentin, Zahn-oder Elfenbeinと,このゾウゲ質を被う次の2つのものからできている.

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最終更新日13/02/03

 

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