Rauber Kopsch Band2. 015   

(もちろんひどく使つて磨りへつた歯ではこの目標はもはや存在しなくなる.)第3のの問題は歯根が正中線に平行して走らないで,斜め外側に向かっていることである.

β)上の外側切歯(上顎の第2切歯あるいは側切歯)は大体において上の内側切歯に似ているが,すべてのダイメンションにおいていっそう小さい.その歯冠が細長い.歯冠の前面を前方からみると,両側縁が歯冠の中央の高さから切縁の方にかけてたがいに離開するのでなくて(上の内側切歯ではそれが離開するが),ふたたび相近づくのである.そのために切縁の長さが短い.歯冠の後面では内外の両側縁の高まりがはなはだよく発達している.接触面は3角形を呈し,エナメル質の縁はV字形である.歯根は横の方面にやや圧せられた形であって,側方に浅い縦の溝をもっている.この根はしばしば内側切歯の根よりいっそう後方に傾いて(30°まで)延びている.

 

[図14]左の上の内側切歯 

[図15]左の上の外側切歯 

[図16]下の4個の切歯

 上の外側切歯の形ははなはだしく変化に富んでいる.これは第3大臼歯と同じく退化の徴候を多く示すものである.しばしば小さい棒の形をした退化型がみられる.左側の外側切歯を右側のものと区別するには内側切歯で述べたのと同じ目標がここにもあてはまるといえる.

b)下の切歯.これらはすべての歯のうちで最も小さいものである.ことに下の内側切歯(下顎の第1切歯あるいは中切歯)が小さい.歯冠の前面は長めの4辺形であり,接触面からみると歯冠がかなりのみの形に近い.前面は多くは平滑で高低がなく,ただまれに縦の溝をもつのみである.縦の方向にも横の方向にも膨らみを呈することがごく少ないので,歯冠前面の弯曲のぐあいで左右を見わけることははなはだ困難である.後面は縦の方向に凹であって,横の方向にはごくわずかにへこんでいるのみ.辺縁隆線Randleistenはほとんど見られない.後面の下部にある結節は上の切歯におけるほどその境がはっきりとしていないが,しかし接触面からみたときに最もよく分るようにかなり著しく突出している.なお接触面からみて分ることは,前面と後面が歯冠の中央の高さまでは相近づいていて,それより歯根の方に向かってだんだんとたがいに遠く離れるようになる.下の切歯の切縁は直線的である.この切縁が下の内側切歯ではその両側の接触面とほとんど直角を呈している.したがって下の内側切歯では隅角徴によっても左右を区別することができない.しかし下の外側切歯ではそれがしばしば可能である.もっともこの場合も磨滅によってその目標がまもなく消えてしまう.そのときにも外側の接触面の走り方が(この歯の前面を前方からみるとき)斜めの方向に下内側から上外側にのびているということが左右の外側切歯を区別する1つの目標になる.しかしこの目標はいつも明瞭であるとはいえない.歯根は側方から押された形で,両接触面に浅い縦の溝をもっている.この縦溝は外側面にあるものが必ずいっそう深い.歯根が1つの縦溝しか持たないときは,それがいつも外側面にある.この点が下の切歯で右と左のものを見わける1つの重要な補助手段である.下の内側切歯の根はしばしばまっすぐに伸びており,外側切歯の根は外側に曲がっていることが多いが,これが内側に曲がっていることも時おりある.

 下の内側切歯について左右間を区別することははなはだむつかしい.それは隅角徴が欠けており,弯曲徴がよわい程度のものであり,その上に歯根徴もしばしば欠けているからである.それゆえ根の外側面の縦溝がいっそう深いということだけが左右を区別する最もよい目標として残るわけである.下の外側切歯(下顎の第2切歯あるいは側切歯)では左右間の区別がいくらかたやすくできる.それは隅角徴がこの歯にはしばしばみられるし,その上に歯冠の外側縁が斜めの方向をとっていること,さらに今までまだ述べなかったことであるが,エナメル質の境が外側の接触面では内側面におけるよりもいっそう遠く歯根尖の方向にのびているのである.

1)犬歯Canini, Eckzähne.これはすべての歯のなかで最も長いもので,その切縁に当るところが角をなして折れ曲がっていて,つまり内側の短い切縁Schneidekanteと外側のいっそう長い切縁の2つが区別される.

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最終更新日13/02/03

 

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