Rauber Kopsch Band2. 020   

β)上の第2大臼歯.これは第1大臼歯よりも小さくて,やはり3つの主な形が区別できる.第1の形のものはすべての性質が第1大臼歯に近いものであるが,カラベリ結節Tuberculum anomaleに当るものはほとんどみられることがない.第2の形は後方の口蓋側咬頭の退化のために3つの咬頭しか存在しないものである.第3群は側方から圧縮された奇妙な形のもので,それでも第1および第2の形からたやすく導きうるのである.

γ)上の第3大臼歯.個体的変化にはなはだ富むもので,完全にできあがった第1大臼歯とちがわない形と大きさのものから細い茎の形をしたものまである.第1大臼歯よりもさらに大きいことさえあるが,第2大臼歯よりも小さいのがふつうである.18~19%でこの歯が欠けている.歯冠は多くのばあい(71.4%)3つの咬頭をもつ.4つの咬頭は10%にみられるだけである.(日本人では4咬頭37%,3咬頭42%,咬頭が癒合または分離して数を決定しえないもの21%である.藤田恒太郎:歯の解剖学, 第3版52頁,1957. )上の側切歯と同じく退化しつつある歯である.

[図26]下の左の第1大臼歯

[図27]下の左の第2大臼歯

[図28]下の左の第3大臼歯

b)下の大臼歯.下顎の大臼歯はたがいによく似ているので,まずそれらに共通な性質を一般的に述べて,ついで各々のちがいをあげるのがよいとおもう.

 歯冠はさいころの形であって,4辺形の咀嚼面は4個の咬頭をもっている.2つの舌側咬頭と2~3の頬側咬頭である.これらの高まりの間にある溝は規則正しい十字架の形をしている.その長い方の棒は前後に走るが同時にやや舌側の方に移っており,短い方の棒は頬側(外方)から舌側(内方)に走るが同時に後方に移っている.そのために前方の2つの咬頭が後方のものより大きいのである.頬舌方向の溝は咀嚼縁に切れこんで,さらに歯冠の舌面(内面)と頬面(外面)につづいている.頬側咬頭がエナメル質の隆線によって舌側咬頭と結合することは決してない.頬面は縦の方向にも横の方向にも円くふくれていて,これが舌側に傾く程度は下の小臼歯よりも軽いのである.咀嚼縁から歯根の頚部に向かって次第に平らになる1本の浅い溝があるが,これは咀嚼面の頬舌方向の溝のつづきである.舌面および前後の接触面については特別のことがない.2本ののうちで前方のものがいっそう幅がひろくて長い.その後面に縦の溝がある.両根は歯頚のところで幅ひろくはじまる.歯根尖はしばしば後方にまがっている.歯髄腔は上の大臼歯と同じく主として歯冠の頚部のなかにある.歯根管はしばしば3本あり,時としては4つのこともある.4つの歯根管があるときはその2つずつが前根と後根のなかにある.

α)下の第1大臼歯が下の大臼歯のなかでふつうは最も大きくて,ほとんど常に(95.4%),5つの咬頭をもち,そのうち3つが頬側に,2つが舌側にある.

4つの咬頭をもつ形は全例の4.6%にしかみられなし.(鈴木誠および酒井琢朗(人類誌64巻87~94頁,1956)によれば,日本人では7咬頭0.2%,6咬頭12, 3%,5咬頭85.4%. 4咬頭2.1%である.)

β)下の第2大臼歯は前者より通常小さいが,まれにそれより大きいこともある.83.4%において4つの咬頭をもち,16.6%に5つの咬頭をもっている.(同じ文献によれば,日本人では6咬頭3.7%,5咬頭50.0%,4咬頭46.3%である.咬頭の数の人種差は,咬頭の判定規準の不確実のために速断しがたいが,諸業績を通覧すると,日本人の第2大臼歯がヨーロッパ人より多くの咬頭をもつ傾向が強いことだけは確からしい.)根は下顎管にすぐ接するところまで達し,また2根が合して1つの円錐をなしていることがある.

γ)下の第3大臼歯.変異にはなはだ富むが,上の第3大臼歯ほどあわれな状態でないことが多辱 5ないし7個の咬頭をもつのが51%,4つの咬頭をもつのが43%,1ないし3個の咬頭をもつのが3%である.その根はしばしば短縮し,また合一して1個の円錐をなしている.その円錐のなかにただ1本の歯根管しか存在しないことがまれでない.

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最終更新日13/02/03

 

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