Rauber Kopsch Band2. 021   

b)乳歯Dentes decidui, Milchzäihne(図29, 30)

 乳歯はWechselzähne(交換歯)あるいはtempordre Zähne(一時的の歯)ともよばれ,その形ははなはだ固定したもので変化にとぼしい.色はやや青みがかった白色であり,その上に磁器のように透いてみえる.乳歯は第1の臼歯を除けば永久歯とはなはだよく似ている.ただ乳歯の切歯と犬歯では根の横断面がほとんどまん円くて,かつ切歯の切縁の尖りが欠けている.永久歯の小臼歯の前駆者にあたるものが乳歯にはない.(一般には永久歯の小臼歯の前駆者が乳臼歯であって,永久歯の大臼歯の前駆者は乳歯にはないと考えられている.(小川鼎三))乳歯の上の第2大臼歯の歯冠は正確に永久歯の第1大臼歯のそれに相当している.カラベリ結節さえみられる.

 乳歯の下の第2大臼歯の歯冠は正確に永久歯の下の第1大臼歯の結節5つをもつ形に相当している.

 さらに詳しくみると,若干の特別な性質を示すのが乳歯のなかでは上の第1大臼歯と下の第1大臼歯とである.上の第1大臼歯の歯冠は長めの4辺形で,その咀嚼面は前後の方向に走る1本の溝によって2つのやや細長い稜状の高まり,すなわちいっそう大きい頬側咬頭と比較的小さい口蓋側咬頭に分たれている.両者が前方および後方でそれぞれ1つの隆線によってたがいにつながっている.頬側咬頭は3つの副結節をもち,かつ頬側咬頭の頬面(外面)の前部に半球状の突出部がある.これを臼歯結節Tuberculum molareといい,同様のものが下の第1大臼歯の相当する個所にもみられるのであって,乳歯の第1大臼歯の特徴ある目標をなしている.

 乳歯の下の第1大臼歯ははなはだ長い4辺形の歯冠をもっている.この歯でも咀嚼面は前後の方法に走る溝をもっているが,咬頭の様子はだいぶ違っていて,深い切れこみでたがいに隔てられた4個あるいは5個の尖った小丘がここにみられる.頬面の前部に臼歯咬頭が高まっている.

 乳歯の大臼歯の根は永久歯の大臼歯の根と似た関係であって,上顎のものは3つに分れて,そのうち2つが頬側に,1つが口蓋側にある.下顎のものは2つに分れて,前方と後方にそれぞれ1本である.乳歯の大臼歯の根について特徴的であり,かつ実地上重要な点は歯根相互のあいだに広い場所がかこまれていることである.この広い場所にその歯の後継ぎになる代生歯Ersatzzahnの原基が存在する(図59).

[図29上下両顎の左側半に属する乳歯

 a 内側切歯;b 外側切歯;c 犬歯;d第1大臼歯;e 第2大臼歯.

c)歯列を全体としてDas Gebiß als Ganzes(図12, 80)

 人の歯列では歯がすきまなく列んでいる.

 この点で人の歯列は他のすべての哺乳類のものと違っている.何となれば類人猿においても上の外側切歯と犬歯とのあいだに1つのすきま(歯隙Diastema)がある.

 歯の大きさは第2大臼歯まで増して,ついでふたたび減ずる.その例外をなすのが上の外側切歯であり,また上の第3大臼歯も例外をなすことがある.しかし歯冠の長さは前方から後方へと次第に減じている.

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最終更新日13/02/03

 

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