Rauber Kopsch Band2. 025   

エナメル質は人体を通じて最も硬い物質である.その硬さは石英あるいは燐灰石に相当している.顕微鏡でみると,このものはエナメル小柱Schmelzfasern, Schmelzsäulen., Schmelmprismenという固くて緻密な線維の密集した群でできている.この線維は全体として放射状の方向をとっており,線維は特別の接合質Kittsubstanzがたがいに固く結合されている.エナメル小柱はただ1層をなして存在する.しかしその一部はゾウゲ質の表面まで達しないで途中で終り,かくしてエナメル質の自由表面が大きく広がっていることが可能である.エナメル小柱の横断面は6角形をなし,その太さは3~5µであり,波状の経過を示し,また横の縞模様をもっている.小柱はたがいに平行に走っていたり,あるいは異なる方向にすすむため線維束の交叉がみちれる.疑いのない回旋や渦の形成があらわれていることがある.切歯ではエナメル小柱の配列が最も規則正しい.研磨標本でいま1つ目だつのはエナメル質に褐色をおびた平行条bräuntiche Parallelstreifenがあることで,これは色素沈着によるか,あるいはまたエナメル質が層をなして形成されることのあらわれである.これはエナメル質ができるときの全身的な石灰塩代謝が変動するリズムに相当しているのである(Fujita, Anat. Anz.1939).(Fujita(藤田恒太郎)) 人のエナメル小柱は(Fujita, Z. Zellforsch.1953)6角形の稜柱をなすのでなくて,縦の小溝をもっている柱でその横断面は6角形でなく,いわゆるアーチ型Arkadenformである.アーチ型というのは1つの平面で,その1側は凸のかなり大きい弓状部より成り,その反対側は1個,2個あるいは3個の凹の弓状部からできているのである.

 成人のエナメル質はわずか1~3%の有機成分と少量の弗素をふくんでいる.

 歯小皮Cuticula dentis, Schmelzoberhäutchenは1~2µしかない薄い膜であるが,角化していて,ひじょうに抵抗がつよい.まだ損傷をうけない歯ではこの膜が歯冠を被っているが,比較的古くなった歯では何らそのあとを残していないのである.

[図35]下顎の小臼歯の根の横断研磨標本 セメント質の厚い層をもっている×20.

[図36]空気をもって充たされたゾウゲ細管 横断研磨標本×350.黒い点としてみえるのが細管の内腔であり,その周りの明るい輪が管をとりまく鞘である.

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最終更新日13/02/03

 

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