Rauber Kopsch Band2. 026   

3. セメント質Substantia ossea, Zementはゾウゲ質の表面でエナメル質に被われていない部分を被っている本当の骨組織の薄い層であって.その厚さは歯根尖に向かって次第に増すのである.これが特によく発達しているのは歯根尖のところ,複合根の溝に沿うところ,また多根歯の根のあいだにあるへこみである.

 セメント質がかなりよく発達している場合はそのなかに多少とも不規則な形をした骨小体がみられる.これをセメント小体Zementkörperchenという(図35).基質は歯根の表面に垂直の方向に走る無数の線維束をふくんでいて,これは歯根膜の線維束のつづきをなして,多くのばあい石灰沈着していないものである.それゆえこれはセメント質のシャーピー線維Sharpeysche Fasernということができる(図40).歯を晒すときにこれは溶けてなくなる.晒した歯根部の研磨標本ではこの線維束のあった場所に長短いろいろの小管がみられる.年令がすすむにつれ,あるいは病的な変化によってセメント質の新しい層がその表面に加わることによって厚くなる.歯根の表面に平行したすじがあるのはいま述べたところの層をなして新たに生じたことを示すのである(図35).

 Osteodentin(骨様ゾウゲ質)というのは固い塊りであって,歯髄腔に向かっているゾウゲ質の内面にくっついており,20才あるいはそれよりおそく生じはじめる.

その量が増すにつれて歯髄腔および歯髄は徐々になくなってゆくのである.この固い塊りは血管をもつ骨組織からなっている.(この場合のOsteodentinは恐らく第2ゾウゲ質sekundäres Dentinをさすと思われる.人間の第2ゾウゲ質は普通のゾウゲ質と同じもので,ただゾウゲ細管の排列が不規則であったりゾウゲ芽細胞の埋入があったりする. Osteodentinは病的な状態に見られ,血管やその他の細胞を含んでいるもので第2ゾウゲ質とは全く異なる.(小川鼎三))

4. 歯髄Pulpa dentis, Zahnmark(図38, 39)は細胞に富む微細線維性の結合組織よりなっていて,そのなかに多数の脈管と神経がひろがっている.その動脈は顎動脈からくるし,神経は三叉神経の第2と第3の枝からくる.リンパ管はSchweitzerによると歯冠部の歯髄にあるリンパ毛細管の叢から発する.1本あるいは2本以上の広いリンパ管として歯根尖からでてゆく.歯髄の最外層のところが特別に重要である.それはここにゾウゲ芽細胞Odontoblasten, Dentinzellenという大きな細長い細胞が1列をなしてならんでいるのであって,この細胞はそれぞれいくつかの突起をだしており,相合してかなり固く結合した1つの膜すなわちゾウゲ芽細胞層Odontoblastenschichtをなしている(図38).おのおのの細胞からゾウゲ芽細胞突起Dentinfortsätzeが1本あるいは2本以上でてゾウゲ細管内のいわゆるゾウゲ質線維Zahnfasernとなっている.また側方にでる突起seitliche Fortsätzeが隣りあう細胞をたがいに連ねており,さらに基底方向にでる1つの突起ein basaler Fortsatzが歯髄突起Pulpafortsatzであって,これはふつう歯髄のいっそう深部にある細胞と結合しているのである.

 歯髄内の神経の最後の終末について,DependorfとFritschが研究したところによると,神経線維がゾウゲ質の内部にも存在することが確かである.神経原線維が歯髄からゾウゲ芽細胞の層を通りぬけてゾウゲ質のなかに入る.ここでは一部はゾウゲ細管の内部にあるが,一部はそのぞとで基質のなかにある.基質内では神経が目のあらい網をしている.

 神経の終末は歯髄のなかにも,ゾウゲ芽細胞の層にもみられ,またゾウゲ質とエナメル質の境ないしゾウゲ質とセメント質の境にもみられる.その終末は簡単な網をなしているのと小さいボタン状の節をしているのとある(図42, 43).

e)歯根膜Periosteum alveolare(Periodontium),Wurzelhaut(図40, 41)

 歯根膜とは歯根をその周囲の部分に固く結びつけているすべての線維およびその間にある細胞や脈管,神経まで合せて総称するのである.線維の大部命は歯槽壁と歯根のあいだに張られており,線維束の少部分は歯頚からその周りの結合組織に達している.

[図37]切歯の歯髄の表面におけるゾウゲ芽細胞の集り ×400

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最終更新日10/08/31

 

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