Rauber Kopsch Band2. 029   

線維は束をなして配列してセメント質のなかに入り,上に述べたようにこれがセメント質の大きい部分を成している.歯槽壁の骨梁にもやはり束をなして到達し,ここでもシャ一ピー線維としてかなりの長さ骨内で追跡される.歯槽壁からセメント質までの経過のあいだに個々の線維束が多かれ少なかれその線維をたがいに交換している.

 線維の走る方向は歯頚のところだけはほとんど横走,すなわち歯根の表面に直角である.歯頚に付いている線維束は舌面(内面)と唇面(外面)では歯肉の丈夫な固い結合組織のなかに放散しているが,接触面では線維束が槽間中隔Septum interalveolareの縁をこえて隣りの歯の頚部にすすんでいる.歯頚より下方のところに付く線維は歯槽壁から斜め下方に向かってセメソト質にいたる.しかも歯根尖に近づくとともに斜行する度がつよくなる.歯根尖のすぐ近くではまたかなり横の方向になり,歯根尖じしんからは線維束があらゆる方向にむかつて放射状にすすんでいる.はなはだ大切なことは,決してすべての線維束がセメント質の表面に対して直角の方向に走っているのでないということである.(歯根と歯槽をいっしょに横断した標本でわかるように)斜走する線維もある(図41).

 それゆえ歯は歯根膜の線維束によってその位置に保持されると同時に吊るされている.斜め下方に向かっている線維は歯が歯槽の底の方へ突きこむことがないように作用している.歯頚にある横走線維と歯根尖からおこる線維は歯が歯槽から抜けでるのを防いでいる.歯の長軸のまわりの回転に対しては歯根の表面に沿って切線方向に走る線維がまずもって作用している.歯根膜の脈管と神経はたがいにならんで走っている.これらは歯の表面に平行して伸びた細長い目の網をなしている.特に注意を要するのは,血管や神経に伴っている結合組織の配列が疎なことである(図40, 41).

 歯根膜の線維束は膠原原線維からできていて,ごくわずかの弾性線維が血管に伴っている.線維束のあいだに少数の線維芽細胞Fibroblastenがある.セメント質の表面に接して線維束のあいだに小さい骨芽細胞Osteoblastenがあって,ひではセメント芽細胞Cementoblastenとよばれる.ふつうの大きさの骨芽細胞が歯槽壁に接してみられる.また所々にハウシップ窩Howshipsche Lakunenのなかに巨大細胞がみられる.第1巻, 図165

 歯根膜の構築的な形がいかにして発生するかについてはvon Lanzが記載している(Verh. anat. Ges.,1931).

f)歯の発生Entwicklung der Zähne (図4459)

 人の胎児では第3月の初めに上下顎の縁にあたる粘膜が著しく円みをおびた隆起,すなわち顎壁Kieferwallをなして高まっている.ここで上皮の深層が稜状をなしておちこんで歯堤Zahnleiste, Schmelzleiste(図45, 46)をつくる.外方からみると縦走する浅い1本の溝すなわち原始歯溝Primitive Zahnfurcheがそのおちこんだ場所を示している.この歯溝は両側で歯壁Zahnwallという高まつた縁をもって境されている.

 次の時期になると,このおちこんだ上皮稜のいちばん深い所で,ある間隔をおいて上皮のかなりつよい増殖がおこり,細い栓の形をしたエナメル胚Schmelzkeimeが顎の結合組織層のなかにのびてでる.この栓状のものはその自由端が太くなってフラスコ形となり細い頚部をもっていっそう表層に近い上皮の部分とつづいている.

 それと同時にかなり顆粒に富む結合組織細胞が多数にこの歯胚の底をかこんで集まって,歯胚をとりまく暗い部分をなすのである.まもなくこのものから歯の原基の全体をつつむ結合組織性の歯小嚢Zahnsdickchenおよびやはり結合組織である歯乳頭Zahnpapilteができる.すなわち歯胚の底部がひろくなって,この底の周辺部はますます突出するが,中央部はへこんで円天井のようになり,だんだんとその高さを増す.結合組織はそれにつれて形を変えて歯乳頭となるのである.かくしてフラスコ形であったエナメル器がいまや鐘状となる.

[図44]大臼歯の軟部を除いた部分が形成されてゆく種々の段階 ×1(Blakeによる)

 1.5つの咬頭のでき初めのもの(Zahnscherbchen,歯小片の意);2と3. 歯冠が歯頚のところまでできて,2根性が初めて示されたところ;. 4.2つの根への分離;5と6と7. 根の発達がさらに進んでいる.

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最終更新日13/02/03

 

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