Rauber Kopsch Band2. 031   

 エナメル器じしんがすでに早くから3つの層(図47)を示す.すなわち内外のそれぞれ1層と,その間にあってだんだんと増大し,さらに2部に分れてゆく層とであって,各層の名称は内エナメル上皮inneres Epithel,外エナメル上皮äußeres Epit helおよびエナメル髄Schmelmpulpaという.内エナメル上皮はまたエナメル膜Schmelzmembranともいい,その細胞はエナメル上皮細胞Schmelzepithelienあるいはエナメル芽細胞SchmelZzellenとよばれる.中間層Stratum intermediumというのはこのエナメル膜に最も近く存在している細胞の集りで,この細胞はエナメル器の発生初期の状態にとどまっているのである.これに反してエナメル髄は内外エナメル上皮の間にあって,ここでは中間層以外の上皮性の細胞が星状のものに変形して,膠様の細胞間物質に封じこまれている.外エナメル上皮は扁平な細胞からなっていて,これがエナメル器をその外側の結合組織から境している.内エナメル上皮から後にエナメル質がつくられる.

[図48]乳歯および永久歯の原基 上下の胎児の上顎. *上皮真珠EpithelPerlen(これは歯堤の残りである).

 さてここでゾウゲ質の初期発生をしらべてみると,歯乳頭Zahmpapille(od. ZahnPulpa)はエナメル器が絶えず長さを増して成長するにつれて,最初は歯冠に相当した形をとったものが,だんだんと進んで,遂には1つの歯の全体にあたる形をとるようになる.それよりずっと前に歯乳頭の最も外層にある細胞が上皮様にならんでゾウゲ質胚Dentinkeimというものになる.これはすでに図47でよく示されている.

 局所解剖的にいうと,ゾウゲ質は(エナメル質もこの点では同じであるが)まず歯冠の尖端のところでできて,ここから下の方にひろがってゆく.かくして初めはゾウゲ質のみからなり,後にはゾウゲ質とエナメル質とからなる小さい帽子状のものができる.これは鋭い縁をもっており,下方に開いている.これが切歯と犬歯ではただ1個,小臼歯では2個,大臼歯では咬頭の数に応じて数個できる.この小さい帽子状のものはZahnscherbchen(歯小片の意)とよばれる.

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最終更新日13/02/03

 

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