Rauber Kopsch Band2. 032   

時間的にいうと,すでに胎児の第4月の終りにはすべての乳歯がそれぞれの歯乳頭の上に,それより少しおくれて永久歯の第1大臼歯がその歯乳頭の上に小さい帽子状のゾウゲ質をつくっており,また同時にエナメル質の最初の形成もはじまっている.ゾウゲ質の帽子はその縁のところに新しく付加されることによって歯根の方に向かって長さを増してゆく.そして厚さの増加はゾウゲ芽細胞のはたらきにより内側から付加されることによっておこる.それと同時に若い乏きには大きかつた歯乳頭の部分すなわち歯髄がだんだんと小さくなる(図48).

 すなわち最初に歯冠ができ,それについで歯頚,そして最後に歯根ができる.歯冠が完成してのち間もなくのこともあり,だいぶおくれることもあるが,その歯冠が歯肉を貫いて外にあらわれる.そのときにゾウゲ質の形成は歯根の完成をめがけてなおひきつづき行われている.それゆえ若い歯は下方に向かって広く開いた歯根をもっている.その開いた口からまだ堂々たる大きさの歯髄をひき出すごどができる.2つ以上の咬頭をもつ歯では上に述べたように,歯冠がもつ咬頭と同じ数のゾウゲ質の小さい帽子が初めにできる.ついでこれらがたがいに合一する.そして後に2つ以上の根をもつ歯では歯髄がその根の数と同じだけの部分に分れるのである(図44).歯乳頭の組織は早くから血管をもっており,特にゾウゲ質の作られるときは毛細管が数多く存在する.

 エナメル質の形成はつぎのようである.これは初めから稜柱の形をしたものとしてあらわれてくる.その場合,ひじょうに長くのびたエナメル芽細胞じしんがゾウゲ質に向かった端から次第に石灰化するのか,あるいはエナメル芽細胞がゾウゲ質に向かった端のところに或る物質を分泌して,この物質が石灰化するのかどちらかである.そして石灰化しない接合質がこの稜柱のあいだを充たしてまとめ合せている(v. Ebner). Speeの研究によるとエナメル芽細胞の内部に球る種の有機性の代謝産物がまずできて,これが無機性の塩類と比較的たやすく結合して不溶性のものとなる性質をもつのである.かくしてますます固いものとなってゆく.固くなるのはまず最初にエナメル細胞のゾウゲ質にずぐ隣っている部分のしかも辺縁部Randteileであって,そのとき中軸部Achsenteilはしばらくの間は固くない.後にはこの中軸部にも石灰化がおこる.Heldがこの現象を研究した結果もいま述べたのとはなはだ近いのである(Z. mikr. anat. Forsch., 5. Bd.,1926) (図49).

 エナメル質の発生がすすむとともにエナメル髄はまずます消えてゆく.そうすると外エナメル上皮は内エナメル上皮にふたたび近づくのであって,遂には後者がエナメル質の形成のために完全に使われてしまって,歯が歯肉を貫いて外にあらわれるときになると前者は乾固し角化した被いとして歯冠の表面に密着している.

 つまり外エナメル上皮は後の歯小皮Cuticula dentisの若いときの形と考えるのが普通であった.

しかしv. Brunnによると本当の歯小皮はエナメル芽細胞の核をもつ残部と,できあがったエナメル質とのあいだに全く無構造の薄い層としてみられるというのである.この説によれば歯小皮はエナメル芽細胞がエナメル質を作り終えたときに,最後に分泌するものということになる.

 Heldによれば歯小皮は“外胚葉性の基底膜ectodermale Basalmembran”であるという.

[図49]エナメル質の形成 (Heldによる)

 セメント質は歯小嚢の結合組織細胞によってつくられる.これが骨芽細胞となり,それはここではセメント芽細胞Cementoblastenとよばれるが,普通の行き方で骨組織をつくるのである.

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最終更新日13/02/03

 

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